成長が期待できないビジオ
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- 2021年4月7日
- トピックス
3月25日にIPO=新規株式公開したビジオ(VZIO)のテレビは、高品質でリーズナブルな価格の代名詞となっているが、2021年にはそれだけでは不十分であるため、同社は今、デジタルコンテンツに全力で取り組んでいる。
カリフォルニア州アーバインを拠点とする同社は、先日のIPOに向けたロードショーで販売中のスマートテレビ「Platform+」の成長性を強調していた。
ビジオの幹部がポジティブな要素を強調したいと考えるのも納得だ。
テレビがよりスマートになり、インターネットに接続されるようになると、従来のリニアテレビの弱点がより明らかとなる。
消費者は、ネットフリックス(NFLX)やDisney+、Amazon Prime のようなお気に入りの定額制ビデオ・オン・デマンド・サービスに素早くアクセスしたいと考えており、そして広告主は、そのような視聴者を獲得する方法を求めている。
Platform+は、アマゾン(AMZN)のAlexa、アップルの(AAPL)のSiri、そしてGoogleアシスタントと連携するオペレーティングシステムを備えてる。
さらに、会員が無料で広告付きのデジタル・コンテンツを視聴できるWatchFree™サービスもあり、そのサービスは2020年には前年比133%の1億4700万ドルに成長した。
しかし、このような収益の成長はハードウェアビジネスの成長の鈍さを覆い隠している。
ビジオには、ベスト・バイ(BBY)やコストコ(COST)、ウォルマート(WMT)などの重要なチャネル・パートナーが依然として存在するが、デバイスの収益は、昨年7%増の19億ドルにとどまった。「Platform+」は、ビジオの利益の38%を占めている。
そのため同社は、このIPOを成長に結びついたテレビのトレンドに乗るための安価な方法として売り込んでいるが、実際には多くの問題を抱えている。
「Platform+」は、ロク(ROKU) と同様にデジタル・コンテンツ・プロバイダーが潜在的な顧客を獲得するために利用できるオープンなコネクテッドTV(CTV)プラットフォームである。
ビジオは、会員がNetflixやDisney+などのSVOD(Subscription Video On Demand)に登録すると、メディアパートナーやWatchFreeのコンテンツを中心に販売されるターゲティング広告に加えて、手数料を徴収している。
デジタルメディア分析会社eMarketerのアナリストは、2020年に81億ドルに達したデジタル広告市場は2024年には182億ドルに急成長し、長期的にはすべての広告がデジタル化されると予想している。
従来のリニアTV広告の市場規模は700億ドルだ。
このように、デジタル広告の成長が「Platform+」の可能性を高めることは否定できないが、このトレンドに乗るための最高のチャンスは、ビジオではないことは確かである。
投資家は今後のビジオのIPOを無視し、この分野であまり知られていないマグナイト(MGNI)とトレードデスク(TTD)に注目するべきだ。
両社のプロダクトマネージャーたちは、正反対の方向からCTVに取り組んでいる。
マグナイトは、セルサイド・プログラマティックCTV広告プラットフォームで、ロサンゼルスを拠点とする同社は、コンテンツ企業やデバイスメーカーの広告在庫販売を支援している。
2月に欧州のCTVプラットフォームであるSpotXとの合併を発表し、両社を合わせた2020年の売上は3億5000万ドルとなった。
合併後は、ディスカバリー(DISCA)、ウォルト・ディズニー(DIS)、Hulu、バイアコムCBS(VIAC)、Fox コーポレーション(FOX)、アクティビジョン・ブリザード(ATVI)、フボTV(FUBO)、サムスン、スリング TV、ロク、ビジオと在庫契約を結ぶ予定となっている。
トレードデスクも、プログラマティック広告プラットフォームを運営しているが、違いは、ターゲット層だ。
トレードデスクはバイサイドのプラットフォームで、同社のソフトウェアはプロクター&ギャンブル(PG)、ナイキ(NKE)、広告代理店などの主要な広告購入者が、ますます多くのコネクテッドTVプラットフォームとオープンインターネットでデジタルキャンペーンを展開するのに役立っている。これらの広告は、ターゲティングされ、完全にプログラマティック、かつリアルタイムに価格設定されている。
同社のこの事業は、広告主が広告キャンペーンをばらまき型のリニアTV戦略から、関連性が高く測定可能なデジタル戦略へと移行させる中で、急速に成長している。
トレードデスクの2月の報告によると、世界的なパンデミックで店舗が閉鎖された年の半ばに広告費が激減したにもかかわらず、2020年の売上高は前年比26%増の8億3600万ドルに達した。
投資家は何が起きているかを見失ってはいけない。テレビ広告ビジネスは、リニアからコネクテッドへと大きなデジタル変革を遂げている。
ビジオの経営陣が、この流れに乗りたい理由は明解であるが、投資家はデジタルトランスフォーメーションの真の受益者であるマグナイトとトレードデスクに注目していくべきである。
健闘を祈る
ジョン・D・マークマン
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