窮地に立たされたインテル
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- 2022年10月3日
- トピックス
今回は、誰も話題にしない最大のハイテク技術トレンドの1つを紹介したい。
大企業によるカスタム・マイクロプロセッサの製造競争だ。そして、世界最大のチップメーカーの1つを窮地に陥れようとしている。
前週、ゼネラルモーターズ(GM)の自動運転車部門であるクルーズ・オートメーションが、驚きの発表を行った。 カリフォルニア州サンフランシスコに本社を置く同社は、カスタムチップを開発する。
これは、インテル(INTC)にとって実に悪いニュースだ。その理由を説明しよう。
半導体は現代の驚異だ。これほど小さなものが、これほど大きな力を持つということに驚かさる。最近まで、プロセッサーは世代が変わるごとに、より小さく、より強力になっていたが、その流れが変わりつつある。
チップは今でも高性能化しているが、小さくはなっていない。すべてはサイズの問題だ。
小さくなるにも限界がある。シリコンからより多くの演算能力を引き出すために、チップ設計者はタスクに特化したシリコンに頼っており、そのために、アーキテクチャを変えている。
それがクルーズ・オートメーションの切り口だ。GMユニットは、2025年に自動運転車用にカスタムメイドのチップを搭載する予定だ。この変化は、自動車メーカーがタイヤを自社製造に切り替える動きと似たようなものだと考えるとイメージしやすいだろう。自動車メーカーは、タイヤメーカーからタイヤを買うこともできるし、原料のゴムを製造しているわけでもない。それでもタイヤを自社製造するメリットは存在する。
チップを一から作り直すのは、費用対効果が低いと思われるかもしれない。エヌビディア(NVDA)などから市販されているグラフィック・プロセッサ・ユニットがある。
GMの自動運転車部門であるクルーズは、カスタムメイドのチップを自社構造で作っているわけではない。設計を行い、製造をファブリケーターに委託している。台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSM)のようなファウンドリには、最先端のスマートシリコンを作るために必要な専用機械がすべて揃っている。
理論的には、このコストは生産規模を拡大することで回収することができる。
クルーズ・オートメーションのカイル・ヴォクトCEOは、2025年にカスタムチップの最高レベルに到達すると述べている。それは、同社の自律走行車「Origin」の生産が開始されると予想される時期だ。
Originは見た目はそれほどでもないが、ハンドルもペダルもない完全なパーソナル自律走行車だ。GMの経営陣は、この移行には新しい考え方が必要だと考えている。
自動車メーカーは、従来のチップサプライヤーへの依存から脱却しようとしている。 2021年以降、チップ不足が続いているため、セクター全体が抑制されている。
皮肉なことに、これらの不足は自動車メーカー自身の計画の甘さによるものだった。
興味深い事実:2020年初頭、パンデミックが北米に及ぶと、ゼネラルモーターズ、フォード(F)、トヨタ(TM)などは、需要の減速を見込んで、直ちにチップの発注を減らし始めた。
実際に起きたことは想定外だったようだ。消費者は新車や中古車を購入し、その多くは高額を支払った。
そして、自動車メーカーは、チップを手に入れることができなかったため、新しいモデルへの切り替えが十分にできなかった。
なぜ、チップの入手するのが困難だったのか?皆、サプライチェーンの混乱のせいにしていたが、それは話の半分に過ぎない。
ファウンダリが自動車向けの古いチップから、家電向けの次世代プロセッサーに生産を切り替えたのだ。
つまり、自動車メーカーが最後尾に回されてしまった。そこで今、彼らは自分たちで解決策を作り出している。
クルーズがチップを設計しているというニュースは、自動車市場向けのシステムオンチップシステムを製造しているエヌビディアにとって気がかりなことだ。だが彼らは、他にも製品や事業を多く抱えている。
このトレンドはインテルにとっても苦しい状況を生み出している。
インテルは汎用チップの最大手であるだけでなく、そのビジネスモデル全体が、同社のx86チップアーキテクチャの大量採用にかかっている。
これらのプロセッサは、CISC(複合命令セットコンピュータ)と呼ばれるものをベースにしている。これにより、標準的な命令セットが作成され、異なるハードウェアやソフトウェアが簡単に連携できるようになる。
エンドユーザーがタスクに特化したチップに移行するにつれ、より大きなトレンドは明らかにCISCから遠ざかっている。
そして、このようなタスクに特化したチップで生産量を増やそうとしているのは、自動車メーカーだけではない。
実際、アップル(AAPL)は昨年、ノートパソコンやiPad向けにカスタムM1チップを投入し、CISCからの脱却を図った。
アップルは、モバイル機器用チップを設計する英国のモバイル技術IP企業であるARMホールディングスから知的財産をライセンス供与されている。
エヌビディアは、2020年に約400億ドルでARMを買収した。つまり、ARMの技術を利用したい企業からのビジネスが失われることはないだろう。
ARMのチップデザインは、RISC(縮小命令セットコンピュータ)アーキテクチャを採用している。
ロイターは9月上旬、クルーズがカスタムチップ用に検討したのは、オープンソースのRISCとARMベースのアーキテクチャだけだったと報じた。
インテルにとって、この傾向は明らかであり、不吉なものだ。
こうした傾向が明らかになった2021年初頭から、インテルの株価は圧力を受けている。
先日サンノゼで開催されたIntel Innovate 2022のプレゼンテーションでは、政府が新たに開発するスーパーコンピュータに搭載されるGPU「Ponte Vecchio」を紹介した。インテルの経営陣は、このプロセッサが、ハイパースケールデータセンターでエヌビディアからシェアを奪うのにも役立つと考えている。また同社は、他の市場、特に国防に向けた移行を試みている。8月にはバイデン大統領が国内における半導体の生産・開発に対し520億ドル以上投じる法案に署名し、国産化率の引き上げを推し進める動きもある。
しかしながら、現状のトレンドを考えると、投資家はインテル株に手を出すには慎重になるべきだろう。インテルの最大の顧客は、インテル・アーキテクチャから離れつつある。そして、この流れは加速している。
いつものように、ご自身でデューデリジェンスを行うことを忘れないでいただきたい。
健闘を祈る。
ジョン・D・マークマン
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