米国に迫る債務危機
- 1095 Views
- 2021年9月16日
- トピックス
米国の債務上限問題は刻々と進行している。債務上限とは、米国が支払いのために借金できる金額の上限を連邦政府が定めたもので、米国はすでにこの危機に陥っている。
始まりは7月末、議会による連邦債務上限の停止が終了した時だった。9月30日には、緊急の資金調達手段が尽き、米国がデフォルト(債務不履行)に陥る可能性があるという壁にぶつかるだろう。
この間に何が起こるかによって、市場が根底から揺さぶられる可能性がある。なぜわかるのかというと、2011年にも同様のことが起こったからだ。
この債務上限問題により、S&P500は18%以上も下落した。
さらに、米国は4日間にわたってテクニカル・デフォルト(債務不履行)に陥った。連邦政府や州政府は、一時的な解雇が経済に与えた影響によって撹乱した。
今回は、政治的な争いが、より激しく、厳しいものとなっている。
実際、共和党の上院議員46名が、歳出規模の修正が行われない限り、連邦政府債務の上限引き上げに賛成しないとする誓約書に署名した。また、ミッチ・マコーネル上院少数党院内総務は、民主党は債務上限について共和党の協力を期待すべきではないと述べている。何かを成し遂げるには60票が必要な政治体制であるため、私たちは危機に向かっているように思える。
共和党は、アメリカは今年1.2兆ドルの赤字を抱えていると指摘しているが、これはバイデン大統領が提出した19億ドルの新型コロナ救済法案と1.2兆ドルのインフラ法案(いずれも数年単位の法案)を計上する前の話だ。
一方で、トランプ前大統領と共和党は、政権を握っている間に、国の借金を7.8兆ドル増加させた。その一部はパンデミック対策だったものの、それ以上に大きかったのは、2018年に行われた1.8兆ドルの減税、つまり超富裕層に限定した減税だ。
民主党はその減税措置を撤回して支払いに充てようと試みたが、共和党がそれをきっぱりと拒否してしまった。繰り返し述べるが、何かを成し遂げるには60票が必要だ。
予算均衡化のために何らかの対策が必要となる。
米国議会予算局(CBO)は、今後10年間で累積財政赤字が12兆ドルに達すると予測している。そして、米政府が合法的に借りられる28.5兆ドルの上限を超えようとしていることも、とんでもないことだ。だが、短期的には、それを成し遂げなければならない。
政府が支払いを行うために借金できなければ、様々な結果を招くことになる。
・ 年金の停止
・ 軍人や連邦職員の給与の削減または停止
・ 債務に対する利息の支払いの滞納
最後の部分が、デフォルトとなる。
2011年の債務上限問題では、スタンダード&プアーズが初めて米国債を最上位の「AAA(トリプルA)」から格下げした。当時のティモシー・ガイトナー財務長官は、実際にデフォルト(債務不履行)に陥れば、州政府や地方自治体、企業、個人の借入コストが大幅に上昇すると警告していた。
実際、財務省国債の保険料は、2011年の危機前の25ベーシスポイントから、危機後は約75ベーシスポイントにまで上昇した。
また、ガイトナー氏は、デフォルト(債務不履行)が続けば、広範な雇用の喪失と、2008年の金融危機よりも深刻な不況を招くとも警告していた。
そして現在、2021年6月。イエレン財務長官は議会で、債務上限の問題が起きれば、再び金融危機を引き起こす可能性があると述べた。また、政府が前回よりも早く緊急資金を使い果たしてしまう可能性があるとも述べている。
さらに、7月には大手格付け会社フィッチ・レーティングスが米国債の見通しを「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に引き下げ、特に債務上限をめぐる争いを見通し引き下げの理由にあげた。
大惨事とはならない可能性もある
2013年にも債務上限問題があったが、2011年に比べて迅速に解決され、市場は議会での騒動による影響をほとんど受けなかった。
確かに、市場を動かす要因は他にもある。だが、現在の市場を見てみよう:
・ S&P500が過去9ヶ月間に行った調整は、5%にも満たない。通常であれば、少なくとも1回は10%程度の調整があると考えられる。
・ S&P500の評価指標であるシラーPERは、直近では38.64となっている。これは、151年間の平均値である16.84の2倍以上だ。
・ 大きな懸念は、過去4回、S&P500のシラーPERが30を超え、30を維持した後、S&P500は最低でも20%下落した点だ。
短期的には、市場は調整に向かっている。そして、債務上限問題は、そのきっかけになるかもしれない。
さらに大きなリスクは、デフォルト(債務不履行)が長引けば、世界の基軸通貨としての米ドルの地位に傷がつくことだ。米ドルが世界の基軸通貨であることで、米国は多くの恩恵を受けている。この状態が変われば、間違いなく壊滅的なダメージを受けるだろう。
億万長者による救済?
共和党は債務上限の引き上げに難色を示している。しかし、デフォルト(債務不履行)が経済や企業収益にどのような影響を与えるかを考えると、ウォール・ストリートが救済に乗り出す可能性がある。ウォール・ストリートの有力者やヘッジファンド・マネージャーは、上院の共和党議員に、選挙資金を受け取り続けたければ、取引を行うよう伝えることができる。
このプロセス全体がバカバカしいと考えるのであれば、共和党のやっていることは、ただのスタンドプレーで、そのうち同調するという楽観的な見方もできる。
一方で、共和党が本気だと考えるなら、その先には危機が待ち受けており、何がきっかけで米国が悲惨な方向に向かうのかは分からない。
ジェットコースター市場への投資
私は市場が乱高下を見せると考えている。私は有料会員には、市場が暴落した場合に利益を得ることができるヘッジポジションを追加することを推奨しているが、将来性のある銘柄のロングポジションを多く保持している。
結局のところ、2011年の債務上限問題の後、S&P 500はすぐに反発し、翌年には13%上昇した。
金の現物を手に入れることも1つの方法だ。今はとても安くなっている。しかし、事態が泥沼化し、信用を失うような債務上限の争いに発展すれば、ドルは窮地に陥るかもしれない。
そして、その時こそ、金のような本当の富が輝く。
あなたの成功を願って。
ブロドリック
※ 広く一般の投資家に情報としてお届けする事を目的とした記事であり、Weiss Ratings Japanが運営する投資サービスの推奨銘柄ではありません。予めご了承下さい。