非接触型決済を支配する半導体メーカー
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- 2021年9月16日
- トピックス
クレジットカードの裏面にある象徴的な磁気ストリップが廃止されるが、それは多くの投資家が理解している以上に大きな意味を持っている。
マスターカード(MA)の幹部は、2024年以降ほとんどの市場で新規発行されるクレジットカードに磁気ストリップが不要になることを発表した。クレジットカードは、半導体テクノロジーに完全に依存することになる。
投資家は、この始まったばかりのトレンドに乗るか検討する必要がある。
一般的なクレジットカードの裏面には、磁気ストリップと呼ばれる古いテクノロジーが採用されている。1960年代にアイビーエム(IBM)によってこのテクノロジーが開発された時、購入の際にカードを磁気読み取り機に通ことは進化のように見えた。当時、ショッピングモールやガソリンスタンドなどに出没する不正なカードと顧客のカードを照合するために、磁気ストリップが必要だった。
しかし最近のクレジットカードには、磁気ストリップとEMVチップの両方のテクノロジーが搭載されている。
ユーロペイ、マスターカード、ビサが設立した業界団体EMVCoの調査によると、世界の決済の86.1%が半導体テクノロジーを使用していることがわかった。顧客が半導体チップを好むのは、準拠した端末にカードをタップするだけで済むからであり、カードを磁気読み取り機に通したり、暗証番号を入力する必要もない。
COVID-19の影響もあり、この1年で普及した非接触型決済はたとえパンデミックが終息したとしても、その勢いが弱まる気配はない。TechCrunchによると、2025年にはスマートフォンユーザーの半数が非接触型決済を利用するようになる。
また、この傾向は世代別の統計に関連するものと同様である。過去1年間、非接触型決済の採用はミレニアル世代とZ世代の間で最も人気があった。TechCrunchによると、後者は「2021年から2025年にかけて、年間650万人のおサイフケータイ新規ユーザーのうち400万人以上を占め、一方、ミレニアル世代は引き続きおサイフケータイユーザーの10人に4人程度の割合を占めると予想される」とのことだ。
金融業界では、さらに大きな効果が期待できる。
不正行為の減少に加えて、チップテクノロジーを採用した決済カードは、生体認証の向上やコネクテッドデバイスとの連携の鍵を握っている。3月には、マスターカードとサムスンが、指紋スキャナーを内蔵したカードの共同開発を発表した。また過去にはマスターカードの幹部が個人の決済情報を自動車と連携させて、道路通行料や給油料、さらにはメンテナンス費用を支払うことについて語っていた。
そのためには、小売業者と銀行は磁気ストリップからの脱却が必要である。
このプロセスは、2015年に始まったEMVライアビリティシフトと呼ばれるもので、アメリカの小売業者と銀行がEMVテクノロジーのサポートを開始するためのインセンティブとなっているため、EMVテクノロジーに対応していない加盟店は不正行為の責任を負うことになった。
覇権を握る半導体メーカー
NXPセミコンダクターズ(NXP)は、クレジットカードやデビットカードに使用されるEMVチップの世界最大のメーカーであるオランダの企業で、非接触型の支払いを安全に行うためのチップテクノロジーである近距離無線通信(NFC)の共同開発者である。この知的財産は、世界中のすべてのスマートフォンメーカーで使用されているが、注目すべきはそれだけではない。
POSメーカーも同社のテクノロジーの製造許可を取得することが必要となる。磁気ストリップが完全になくなると、すべての新しいPOSにこのテクノロジーが搭載されるだろう。
NFCのアドレス可能な市場総額は、2017年にはわずか95億ドルだったが、今年は255億ドルになると予測されている。Statistaは、2024年の予測市場規模は473億ドルと述べている。
NXPセミコンダクターズはNFC市場を支配することになるだろう。
同時に、経営陣はこの重要なIPを中心に他の製品を構築するように注意を払っている。
最高技術責任者のLars Reger氏は1月、アマゾン(AMZN)、アルファベット(GOOGL)、およびすべての大手自動車メーカーと緊密に協力して、スマートホームデジタルアシスタントや自動車に決済IPを組み込むことを強調した。
NXPセミコンダクターズは、スマートホームソフトウェアとシームレスに動作する超広帯域プラットフォームを開発している。Reger氏は、毎朝自宅のキッチンに入ると同社対応プロトコルのエコシステムがお気に入りのコーヒーを作り始めるようになるかもしれないと説明する。帰宅の際には、他のシステムが自動的にドアをロックし、照明を消し、彼が近づくと車のロックを解除、さらに車内のチップが、ポケットの中の暗号化されたスマートフォンを認識する。
これらの製品はすでにその多くが準備されており、決して遠い未来の話ではない。このテクノロジーが主流になれば、NXPセミコンダクターズはそのすべての儲けを手に入れることができるだろう。
磁気ストリップの廃止は大したことではないように思えるかもしれないが、非常に大きな意味を持っている。それは、非接触型決済革命の次の部分の始まりである。
投資家はNXPセミコンダクターズ株を低迷期の中で買うことを検討しよう。
健闘を祈る
ジョン・D・マークマン
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