一人の男の反乱が生んだ超巨大市場
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- 2024年3月11日
- トピックス
あなたは最近、オンラインで買い物をしましたか?
アマゾンが日本に参入して20年以上が経ち、オンラインで買い物をすることは当たり前となりましたが、今でも年率12~15%ほどで拡大し続ける成長市場です。
その中でも特に進歩、成長しているのは「物流」分野です。アマゾンは2023年最初の半年ほどで、18億個もの商品を当日〜翌日に配達しました。1日に1億個の商品が、注文されてから24時間以内に届いているのです。
これは2019年の4倍もの数で、アマゾンが何年もかけて強固な物流網を築き上げてきたからでしょう。
アマゾンはさまざまなAIサービスも提供しているため、AI企業として語られることもありますが、成長を続けるEC市場の王者であり続けていることが土台にあることは間違い無いでしょう。
そしてECが成長し続ける土台には、高度な物流システムが欠かせません。
今日はそんな物流の歴史、180年続くビッグトレンドについて解説した、ナイルズ・マティブ氏の記事をお届けします。
「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という言葉があるように、賢明な投資家は歴史に学ぶ必要がある。株式市場の過去のサイクルや様々なブーム、バブル、企業の栄枯盛衰、金融政策の変化などを知ることで、あなたの投資リテラシーと投資パフォーマンスは素晴らしいものになるだろう。
そこで今日は一つ歴史の話をしたい。180年前、一人の男が政府に反乱したことがきっかけとなり、超巨大市場と、あなたもよく知るスター企業が誕生した。そして180年経った今も、その市場は成長し続けている。
1844年のことだ。弁護士であり哲学者であもるライサンダー・スプーナーは憤っていた。彼はアナーキスト(自由主義者、無政府主義者)であり、郵政を担う公的機関アメリカ合衆国郵便局内部の腐敗と無能さ兆候があまりにも多く、そのために高額な郵便料金を支払うことにうんざりしていたのだ。
反乱
1844年1月11日付の書簡で、スプーナーはボストンとボルチモア間で独自の書簡サービスを開始することを米国郵便局長に伝えた。
当時、米国の郵便市場はアメリカ合衆国郵便局が独占していたが、この2地点間を郵便局を通して手紙を郵送すると、1日の賃金の4分の1以上の費用がかかった。1日働いて100ドル稼ぎ、遠く離れた親戚にそのことを報告しようとしたら25ドルもかかってしまうということだ。
そのため当時も民間の個人郵便配達事業者が存在していた。法的にはグレーゾーンだったが、アメリカ合衆国郵便局が無視できる範囲で細々と営業していたのだ。
しかし、スプーナーはただ郵便物を運ぶだけの小さな仕事を始めようとしていたわけではなく、本格的な会社を立ち上げるつもりだった。アメリカ合衆国郵便局は訴訟で報復すると予期していた。
実際、彼は郵便事業の開始に届け出た書簡で「高すぎる郵便費用の問題を刺激し、郵便業界における自由競争の憲法上の権利を試す」ことが目的だと述べている。
スプーナーが設立したアメリカン・レター・メール社は、アメリカ北東部で手紙を配達し始めた。料金は5セントで、アメリカ合衆国郵便局の3分の1以下だった。
調査
スプーナーが会社を立ち上げた数日後、議会は民間郵便会社に関する調査を開始した。 適正な郵便料金を請求した彼の会社は繁栄し始めていたが、スプーナーと従業員の何人かは、手紙を輸送中に逮捕されてしまった。
政府は明らかに郵便事業の独占権を守ろうとしていた。しかし圧倒的に良いサービスが登場すれば、人々はそれがグレーゾーンであっても喜んで利用する。
そのためアメリカ合衆国郵便局は郵便料金の前払いなど、スプーナーの会社が開発した革新的なアイデアを取り入れ、議会は半径500マイルの郵便料金をスプーナーの料金に合わせ5セントに固定すると決定した。
そして政府は、スプーナーが手紙を配達するたびに、違反行為でスプーナーを告発し続け、際限のない法的ハードルと膨大な費用が発生した。
結局、彼と彼の会社は潰されてしまった。
しかし彼の功績は凄まじいものだ。スプーナーの挑戦により、によってアメリカ合衆国郵便局はスリム化と効率化を強いられた。
彼のアイデアをもとに郵便料金は大幅に引き下げられた上に、赤字だった米国の公的郵便制度はわずか3年で黒字に転換したのだ。
そして何より、効率と利益を重視する民間の郵便事業者が登場する足がかりを作った。
この話が今日と何の関係があるのか?
すべてだ。
収益機会
それから180年経った今、政府運営の郵便事業は非効率に満ちている。切手の値段が上がり続けているにもかかわらず、2023会計年度は65億ドルの赤字だ。
さらに、政府運営の郵便公社の第1種郵便物1オンスの輸送料金の6倍以下の金額で手紙を配達することは、違法だ。理解し難い法律だが、要するに民間の郵便事業者は素晴らしく効率的な事業を行なっているにもかかわらず、非効率な政府運営の郵便公社の基準に従う必要があるということだ。
しかし、民間の郵便事業は競争し、成功し続けている!
ほとんどの人は、ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)やフェデックス(FDX)、アマゾン・ドット・コム(AMZN)のトラックが自分の家に近づいてくるのを見るのが好きだろう。何かを運んできてくれるということだから。
そのような光景は、オンライン・ショッピングによってますます一般的になっている。
オンライン・ショッピングはすでに普及していると思うかもしれないがとんでもない。まだまだ成長を続ける素晴らしい市場だ。
2028年までに、米国のeコマース売上は1兆3000億ドルに達すると予想されている。ちょうど10年前、全世界がインターネットでの買い物に費やした金額だ。
2014年、世界のeコマース小売売上高は約1兆3400億ドルに達した。 2021年までには約4倍の5兆2100億ドルに増加した。
そして、2026年までにさらに56%増加すると推定されている。
この素晴らしい成長は、180年前、スプーナーが起こした反乱が生んだものだ。
1つのトレンドが2世紀近くにわたり人々の生活を豊かにし、投資家にリターンをもたらすこともある。一人の男の反乱をきっかけに始まった長期トレンドは、今後も投資家を豊かにするチャンスを提供してくれるだろう。
幸運を祈って。
ナイルズ
※ 広く一般の投資家に情報としてお届けする事を目的とした記事であり、Weiss Ratings Japanが運営する投資サービスの推奨銘柄ではありません。予めご了承下さい。