「セーフマネー」戦略に従えば、大統領選挙関連の不安はなくなったも同然
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- 2020年11月12日
- トピックス
タイトルを見て、馬鹿馬鹿しいと思われたかもしれないが・・・大統領選挙の選挙運動に関する内部データなどを見られる立場にあった我々のあるスタッフは、「選挙結果が数週間、もしくは数日もかからず、すぐに判明するだろう」と自信を持って言っていた。
火曜日の午後までマーケットも同様のメッセージを発しており、ダウ工業株30種平均やS&P500種株価指数、ナスダック総合指数は不安を振り払い、2.16%、1.98%、1.94%プラスになった。
テレビに映る専門家たちは、解説が必要となれば、いつも「これはブルーウェーブ(訳注:民主党のバイデン候補が勝利し、上院下院の両方で民主党が過半数の議席を獲得すること)が起きようとしていて、新たな景気刺激法案を推進している証拠だ」と理由づけた。
それで、今はもしかすると「アメリカの朝」(訳注:1984年に再選を目指したレーガン大統領の選挙スローガンで、正式名称は「誇り高く、より強く、より良く」。「今日よりも明日の方がいいに違いない」という米国流の楽観主義の典型例)の再来で、民主党には、そのスローガンを実行するチャンスが訪れているのかもしれない。
もしくは、トランプ大統領がまたもや逆転勝利を収め、前回と同じくマーケットの動きが旋回しはじめ、この先の4年間もこれまでと同様の状況になるかもしれない。
もちろん、議会の構成や政府の政策遂行能力に重大な影響を与える上院下院の選挙結果も含め、選挙日の24時間に起きた全貌は、まだ話すことができない。つまり、3日火曜日の投票の際と同様、状況はまだ不確実なままだ。
これまでの一年間、ずっと米国には酷い分断が見られ、抗議と暴力が米国を揺るがしてきた。トランプ大統領は、攻撃的かつ長引く法廷闘争をするために準備を進めている。記者会見の時点でも譲歩していない。
このような不安感によってマーケットのボラティリティはさらに上昇し、10月下旬には株価が急落した。COVID-19の新規感染者数が過去最多を記録したことから欧州ではパンデミックと戦うために新たなロックダウン(都市封鎖)や行動制限が行われており、状況は悪化の一途を辿っている。
さて、今回の大統領選挙が過去のものとなったとき、年末以降のマーケットが順風満帆になると期待できるだろうか?
いくつかの資産クラスでボラティリティの上昇に終止符が打たれるだろうか?
ほとんどの銘柄や業種が揃って上昇した2018年以前の強気相場が再び生まれるだろうか?
これらの質問に対する私の考えは「ノー」だ。
その理由の一つとして、今週の選挙結果は、我々が2年半前から議論してきた強力な基礎となる経済力と循環的な力を変えることができないからだ。これらの力は、2018年1-3月期に始まった「舞台裏」で起きているマーケットの大きな変化を煽っており、防御的な収益志向の株式銘柄や貴金属が主導権を握っている。
もう一つ理由を上げると、今回の選挙によってCOVID-19のパンデミックが撲滅できる訳ではない。感染者数の増加に伴う飲食店などの営業停止や政府による行動制限は、残念ながらまだしばらく続くと思われる。
さらに重要なこととして、これから4年間にわたる米国の運営を任される大統領は、これまでのどの大統領よりも自由が効かない。厄介で核心的な部分の詳細は超党派の議会予算局(CBO)が発表した2020年9月の見通し(英語)でご覧いただける。
このデータによると、アメリカの連邦債務は来年には22兆ドルにまで膨らむのだ。GDPに占める負債割合は、おそらく100%を超えて2023年には107%に達し、第二次世界大戦後の記録を塗り替えることになる。
米国が借金に対し支払う利息は2030年には、2021年の水準から2倍以上の6600億ドルになる。
これら全ては何を意味するのだろうか?
もし共和党と民主党が力を合わせ、積極的な景気刺激策などで妥結点を見つけようとしても、そうするための財源はないのだ。借りなければならない。関連コストが急上昇した場合、資本市場は引き戻す可能性がある。
要は、選挙前に最もうまくいった「セーフマネー」投資戦略は、選挙後も同様にうまくいくだろう。
引き続き「セーフマネー」の分野、戦略、資産クラスに注目し続けよう。これには、より高利回り・高格付けの防衛的な投資銘柄や、米国債、貴金属などが含まれる。
不利な業種の銘柄を避け続け、政治とはあまり関係ない、長期的なトレンドを描ける銘柄を保有し続けよう。
例えば、発電や自動車産業などの化石燃料離れは、多くのエネルギー企業にとって悪い情報だ。
さらに、FRBが今後何年も「永遠のゼロ金利政策」を続けようとしていることから、誰が大統領になろうと関係なく、金融銘柄にとって有利な状況にはならない。
何より、数週間後、数ヶ月後の新しい指示に備え、柔軟性と警戒心を保って、準備をしておくことが大切だ。
今回の選挙が終わったからといって、マーケットのボラティリティが低下する訳でもないし、潜在的な大きな落とし穴がなくなるわけでもない。
それではまた。
マイク・ラーソン