成功する投資家が政治を無視する理由
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- 2020年11月17日
- トピックス
大統領選挙の開票作業が続いているが、投資家はいつも同じ過ちを犯している。ホワイトハウスに誰が座っているかを基準に目標を設定しているのだ。
先日、ビスポーク投資グループはトランプ大統領が4年前に選出されて以来、どのような銘柄が最高のパフォーマンスを発揮しているかを示す有益な情報を発表した。結果は衝撃的で、勝者は電気自動車と人工知能、敗者は石油、ガス、石炭であった。
この結果はトランプ大統領の指針とは真逆だ。永遠に破棄されるべき一時的な利益ではなく、本当に重要な要因を見極めることについてのより大きな教訓となるべきである。
大統領が時代の大きな流れを変えることは不可能だ。このメガトレンドは、イノベーションと単純なビジネス経済学によって動き出す。
トランプ大統領が最初に行った大きな選択の一つは、電気自動車を製造している企業を対象とした政府の補助金を廃止することだ。その後、彼はパリ協定から米国を離脱させ、石炭企業への規制を緩和させることで経済を優先させた。
このような政策にもかかわらず、経済の現実が打ち勝った。
Twitterに投稿されたビスポークの報告によると、世界最大のEVメーカーであるテスラ(TSLA、格付け「C」)の株価は、トランプ大統領のサプライズ当選以来984%上昇、世界有数のAI企業の1つであるエヌビディア(NVDA、格付け「B-」)は627%急上昇し、ライバルのアドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD、格付け「B-」)は、トランプと対立している中国と強い繋がりがあるにもかかわらず、990%も上昇した。
また、驚くべきことがもうひとつ。アマゾン(AMZN、格付け「B-」)の株価は、トランプ大統領がオンライン小売業者の株価を低迷させようとする企てに直面したにもかかわらず、2016年11月から288%上昇し、1.5兆ドルという驚異的な価値を株主にもたらしてることだ。
2018年3月にトランプ大統領は、アマゾンが国に所得税をほとんど払っていないことやアメリカの郵便局を配達員扱いして大きな損失を出していることをツイートした。その後、2017年に誕生したばかりの新興ネットメディア・アクシオスは、トランプ大統領がアマゾンの創業者ジェフ・ベゾス氏を嫌っていると仲間に話したと報じた。
ベゾス氏は、他の先進的なテック企業の経営者と同様に、人工知能のコア・コンピタンスを構築しており、クラウドコンピューティング最大手アマゾン・ウェブ・サービスを完全子会社化することで、すべての企業顧客にAI処理へのアクセスを提供している。
アマゾン・ウェブ・サービスのデータセンターで稼働している次世代マイクロチップの多くが、エヌビディアやアドバンスト・マイクロ・デバイスによって作られているのは偶然ではない。このカスタムシリコンは、ソフトウェアと結合して人間の脳のような情報を迅速かつ効率的に処理できるからである。
ホワイトハウスはAIビジネス全般に味方せず、商務省は華為とその関連会社をブラックリストに載せたことから、アメリカの半導体企業は、中国の通信機器会社にチップを販売するための特別なライセンスを取得することを余儀なくされた。しかし、 そんな厳しい状況の中でも、エヌビディアやアドバンスト・マイクロ・デバイスなどの企業は成長を続けた。
明らかに、AIのトレンドは政治よりも大きいのだ。
テスラの台頭は、政治を飛び越えた。トランプ政権が燃費基準の緩和やほとんどのEV購入者が利用できる7500ドルの連邦税控除の撤廃に向けて取り組んできたにもかかわらず、カリフォルニア州パロアルトを拠点とする同社は、大統領でさえも妨害できない電動化のメガトレンドに乗っている。
2018年1月、フォード・モーター(F、格付け「D」)は、ベストセラーのピックアップトラックF-150を含め、2022年までに40車種を電動化するため110億ドル規模のファンドを発表した。今年の初めにゼネラルモーターズ(GM、格付け「D +」)は、2025年までに100万台のEVを販売する計画を掲げた新しいEVプラットフォームを披露したほか、フォルクスワーゲンは910億ドルをかけて、全車両をEV化する予定である。
ほとんどの自動車メーカーにEV化の波が迫っており、テスラの創設者が10年以上前に想像したグリーンエネルギーの夢は、これまで以上に現実的なものとなってきている。
一方で、トランプ大統領が当選して以来、エネルギー・石炭企業の業績は最悪で、それらの企業は、風力や太陽光、天然ガスといったクリーンエネルギー源に対するシフトの犠牲者となっている。
エネルギー・セレクト・セクターSPDRファンドETF(XLE、格付け「D」)は2016年11月から42%下落し、ヴェンエック・ベクトル・コールETF(KOL、格付け「D」)は28%減少している。
大統領の政策や善意は大きな流れを変えることはできず、企業は単に汚れたエネルギー源から遠ざかっているのである。
1月に誰が大統領執務室に座るのかはまだ分からないが、投資家は、トレンドとその理由を知っておき、それに応じて投資するべきである。
健闘を祈る
ジョン・D・マークマン