EVブームに勢いをつける金属
- 1651 Views
- 2021年4月18日
- トピックス
工業用金属といえば、普通は「鉄」や「銅」を思い浮かべるだろう。
通常、「ニッケル」は出てこない。
実は、アメリカの5セント硬貨は、まさにニッケルで出来ているのだ。
少なくとも25%はニッケルで、残りは銅だ。
ニッケルが硬貨に使われていたのは、第一の強みである、高温でも腐食しにくく、金属メッキにも適しているからだ。
第二の強みは、ニッケルはステンレス鋼の主成分でもあることだ。
ステンレス鋼は、耐久性がきわめて高く、耐火性・低温特性などにも優れていることから、建築物や土木工事、水素ステーション、船舶などの様々な分野と環境のもとで使用され、長寿命・メンテナンスフリーを実現しています。
つまり、米国や中国などの経済回復は、インフラ支出やパンデミックの余波によるインフレ率の上昇とともに、ステンレス鋼など様々な分野で使われているニッケルの需要増加に伴う価格上昇を意味している。
そしてニッケルの第三の強みは、「バッテリー」だ。
ニッケルは、トヨタ自動車(TM)のプリウス、KIA(キア)のニロなどのハイブリッド車に使われるニッケル水素バッテリーに使用されている。
さらに需要に最も大きな影響を与える可能性があるのは、成長を続ける電気自動車(EV)市場だ。
しかも、ニッケルがなければ、EVブームが「勢いを増す」ことはないとも言える状況にもあるのだ。
電気自動車のニッケル消費量は、ステンレスメーカーのような伝統的な産業よりもはるかに少ないが、リサーチ会社ウッド・マッケンジーによると、EVバッテリーのニッケル消費量は2019年から2025年の間に64%急増すると予想されており、この需要を満たすことは困難である可能性があると付け加えられている。
二酸化炭素排出量の削減取り組みを伝えるメディア、フューチャー・ネット・ゼロのアナリストによる最近の記事では、サスティナブル=持続可能なニッケルの供給が、EV市場にとって「深刻な問題」になりつつあると述べている。
記事によると、EVパワートレイン(動力源)は「いくつかの原材料産業に突如として前代未聞の負担をかけている」という。これは、特にニッケルに当てはまるだ。
テスラ(TSLA)がEVパワートレインにニッケル・コバルト・アルミニウム酸リチウムを使用する。一方で、BMW、Hyundai、Renaultは、リチウム・ニッケル・マンガン酸化コバルト (NMC) の様々な種類を使用している。
EVの需要拡大に伴い、ニッケルのニーズは着実に高まっているが、供給は遅れている。
リージェント・アドバイザーズのマネージング・ディレクター、マイケル・ベック氏によると、新たなニッケル鉱山の生産開始には7~10年かかるという。この標準的な年数は、少なくとも今後12年間はニッケル市場が大幅な供給不足になる可能性が高いことを意味している。
去年、テスラのイーロン・マスク氏は下記のように述べた:
再度強調したいのですが、鉱山会社はもっとニッケルを採掘して欲しい。世界のどこであろうとも、より多くのニッケルを採掘し、効率的でかつ環境に優しいニッケルの大量採掘を行って欲しい。
現在テスラのモデル3には約30キロのニッケルが含まれており、イーロン・マスクCEOは、オーストラリアの大手BHPビリトン(BHP)からの長期供給を目指している。
BHPのニッケル・ウェストの事業を統括するエディ・ヘーゲル氏は、オーストラリアで開催されたディガーズ・アンド・ディーラーズ・フォーラムで、次のように語った:
リチウムイオン電池の正極では、どのような金属(あるいは金属の組み合わせ)をテストしても、ニッケルが最も高いエネルギー密度を生み出します。これはニッケルの未来がなぜ明るいのかを垣間見るものです。ニッケルは、リチウムイオン電池の馬馬車なのです。
その他の主要なサプライヤーは、環境に優しい水力発電を用いてカナダで事業を展開しているブラジルのヴァーレ(VALE)と、世界最大の生産者であるロシアのノリリスク・ニッケル(NILSY)だ。
他にもある。
COVID-19パンデミックに伴う世界的な金融・財政政策は、2008年よりもさらに大規模なものとなっており、それがコモディティ価格の追い風になると考えている。
そして、それはすべての原材料が今後数年で劇的な強気相場を経験する可能性が高いことを示しており、ニッケルにとっては、とんでもないパーフェクト・ストームとなるかもしれない!と思っている。
あなたの成功を願って。
ブロドリック
※ 広く一般の投資家に情報としてお届けする事を目的とした記事であり、Weiss Ratings Japanが運営する投資サービスの推奨銘柄ではありません。予めご了承下さい。