テレビ広告は強力な合併で次のレベルへ
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- 2021年4月12日
- トピックス
私は米国のテレビ業界や広告分野で、とても重大なことが起きているため頻繁に取り上げている。
今、米国のメディア業界では、収益の多様化が進んでいるのだ。
リニアTV(視聴者が配信時間が固定されたテレビ番組を本来のチャンネルで視聴する従来型のTVシステム)からコネクテッドTV(CTV:ストリーミング動画コンテンツの配信を容易にするスマートTV等に接続できるデバイス)へと移行していく中で、莫大な利益を得ることが可能となっているのだ。
今のところ、この流れが止まる気配は全くない。
WEB広告を手掛けるマグナイト(MGNI)は、今年に入ってコネクテッドTVの会社SpotXの11億7000万ドルの買収を発表した。マグナイトの株価は、巨額な買収金額にもかかわらず、26%急騰して過去最高値を更新する場面があった。
コネクテッドTV(CTV)は、2020年には市場規模が2600億ドル規模となったテレビ業界の未来だ。
リニアTVとコネクテッドTVの両サイドをめぐる変遷には、強力な企業が名を連ねている。
アップル(AAPL)のティム・クックCEOは、毎週のようにフェイスブック(FB)とアルファベット(GOOGL)に対しプライバシーに関する問題をめぐって非難しているようだ。広告プラットフォームを通じて広告を販売する大手テクノロジー企業が、本当の顧客である広告購入者に利用者の個人情報を売っていると。。。
これは広告に対する根本的な誤解であろう。選択肢があれば消費者は広告なしのサービスに喜んでお金を払うだろうと想定されていたが、それが誤りであることは明白である。
ウォルト・ディズニー・カンパニー(DIS)が運営する「Hulu」は、SVOD(サブスクリプション・ビデオ・オンデマンド=定額制動画配信)サービスを提供している。
「Hulu」は、「広告付きの無料サービス」と「月額課金制の有料サービス」の両方を提供しており、会員のほぼ3対1は「広告付きの無料サービス」を選択しているのが現状だ。
メディア大手のコムキャスト(CMCSA)は、SVODサービスである「Peacock」を開始し、メディア広告は事業を運営していく上ですぐに中心的な焦点となった。また、Apple TV+(AppleのSVODサービス)では発売時に有料配信への関心があまりにも低かったため、家電製品の購入者に無料でサービスを提供した。
圧倒的多数の消費者が複数の有料メディアに対する支払いを拒否している一方でメディア業界ではテレビ広告でサポートされたビジネスモデルが機能している。
だからこそ、広告テクノロジー企業であるマグナイトは、SpotXのためにお金を出し惜しみしないのである。
従来のリニアTVのデジタル版であるコネクテッドTVは、たとえ強力な巨大企業が望んでいたとしても、なくなることはありえないのだ。
私は2019年3月に初めてマグナイトについて取り上げた。当時は「ルビコン・プロジェクト」と呼ばれていたが、時価総額はわずか3億5600万ドルの小規模なアドテッック事業だった。
非常に多くのネット広告ビジネスと同様に、ページが開くとすぐに開始された迷惑なポップアップやビデオ広告のせいでWebベースの広告をつまらなくしていたが、今では大きな変貌を遂げている。
コネクテッドTVは新たなスタートだ。
アドテック(AdTech=ネット広告の技術を広く差す総称)は、マーケターが誰がどのくらいの時間見ているのか、そして最終的にクリックして商品を購入するかどうかの統計を得ることを可能にするが、従来型のリニアテレビはせいぜい道端に貼られた看板のように散らばっているだけだ。
ケーブルテレビ会社でさえ、オンライン化に奔走しており、新しいWiFi対応のセットトップボックス やインターネット無制限はトロイの木馬である。
魅力的なコンテンツをオンラインで促進することは、ターゲットを絞った広告を販売するチャンスを意味する。おそらくコードカッター(ケーブル(衛星)テレビの契約を解除して「ケーブルを切る」ユーザー)がネットフリックス(NFLX)やその他のSVODサービスに移行することによる収益の流出を遅らせることになるだろう。
デジタル・マーケティングなどの市場調査を手掛けるeMarketerは、2020年の間に660万人の消費者がケーブルテレビの契約を解約したと推定している。
一方で、デジタル化された情報を提供するコンテンツ・プロバイダーもオンラインに移行している。
昨年11月、バイアコムCBS (VIAC)は、Amazon Web Servicesへの移行を開始したことで、新しいバーチャルVODチャンネルを開設し、ターゲット広告でマネタイズすることが容易になった。
共通点はアドテクとCTVだ。
メディア業界では、広告費がリニアTVから広告付きSVODに移行するというメガトレンドが起こっている。
テレビ広告分野が、すべてその方向に向かっていることは時間とともに証明されるだろうと考えている。
健闘を祈る
ジョン・D・マークマン