この貴重な金属を「確保」しよう

カリフォルニア州サンノゼで経済学の教授を務めるマイケル・ケベイン氏は、2021年のある日の夕方、いつものように2005年式のプリウスを駐車した。

翌朝、息子のエリオットが車のエンジンをかけに行った。「ジャックハンマーのような音がして、近所全体に響いていた」とケベイン氏は言った。　

彼の車から触媒コンバーターが盗まれていた。

その2日後、ロサンゼルスに住む彼の姉も、彼女の2003年式のホンダ・アコードのコンバーターを盗まれた。「これは偶然ではないはずだ」とケベイン氏は言う。

その通りだ。

ハサミを持った泥棒たちが、至るところで車の下に潜り込み、コンバーターを奪っている。

その理由を説明しよう。

彼らは、コンバーターに含まれる貴金属を狙っているのだ。

ミルウォーキー市にある自動車整備会社の経営者ジェリー・ターリフ氏は、泥棒が車の下に潜り込むのを防ぐため、一部の顧客の車のタイヤの空気を抜く対策を取っているという。

世界的な排気ガス規制強化の流れの中で、より高性能な触媒コンバーターと、それを支える金属の需要が急増している。

その結果、プラチナ、パラジウム、ロジウムの価格が高騰し、史上最高値を更新した。

例えば、5年前、パラジウムの価格は1オンスあたり500ドルだったのが、一転して、昨年は1オンスあたり2875ドルを記録した。

一方、ロジウムの価格は、5年前には1オンスあたり640ドル程度だったのが、今年は2万1900ドルと、息を呑むほどの高値になっている。

ロジウムは、新型コンバーターにおいて窒素酸化物の排出量を削減するという特別な役割を果たす。

また、ロンドンに拠点を置く貴金属調査コンサルティング会社「Metals Focus」のプラチナグループメタル担当ディレクター、ウィルマ・スワーツ氏によると、世界的に窒素酸化物の規制が「急速に進んでいる」という。

一方、パラジウムは、宝石や歯科、手術器具、電子機器などにも使用されており、普及が進んでいる水素燃料電池の主要成分でもある。

だが、供給は逼迫している。

まず、パンデミックの影響で、3つの金属の主要生産国である南アフリカの鉱山が打撃を受けたことが理由に挙げられる。

また、この国の鉱山では既に電力不足や労働争議などの問題を抱えていた。

第二に、世界のパラジウム・キャピタルであるロシアとの関係が緊迫している。例えば、2018年4月に米国がロシアに制裁を加えたとき、パラジウムのスポット価格は一晩で6％も跳ね上がった。

これに加え、需要も急増している。

ETF運用会社ディレクションのマネジングディレクター兼オルタナティブ部門責任者であるエド・エギリンスキー氏は、「より多くの人々が、ある程度の旅行を再開するようになれば、最も利用される可能性の高い交通手段は自動車だろう」と述べている。

「世界経済の再開は、自動車販売の大幅な増加につながる可能性がある。」

さらに、中国やインドの経済は発展し続けている。

アバディーン・スタンダード・インベストメンツの上場投資信託部門責任者であるスティーブン・ダン氏は、新しい排ガス規制の基準を満たすためには、中国のすべての新車に「良質な触媒コンバーター」を装備する必要があると述べている。

そしてそれは、1台あたり約30％のパラジウムの増加を意味すると報じられており、「各国が排ガス規制を強化する中、パラジウムはその恩恵を受けることになるだろう」と述べた。

一方で触媒コンバーターがなく、金属をほとんど必要としないEV=電気自動車の普及がワイルドカードとなる。

ロンドンに拠点を置くシティのコモディティアナリスト、マックス・レイトン氏によると、これらの金属のコスト上昇は非常に激しく、「自動車メーカーは一刻も早くバッテリー式電気自動車に移行しなければならないというプレッシャーにさらされている」という。

しかし、現在のところ、EVはコストが高く、走行距離も限られているため、ガソリン車やハイブリッド車が主流となっている。

バイデン政権が参加したパリ気候協定も需要を支える要因の一つだ。これにより、大気汚染防止に欠かせない要素の需要がさらに高まるだろう。

上記の理由により、ネプチューン・グローバル社の社長兼会長であるクリス・ブラジ氏は、今年のパラジウムの取引価格は3000ドルに達すると予想している。

金属の価値が急上昇しているのに注目しているのは、泥棒だけでなく、投資家も同様だ。

ロジウムの地金は販売されているものの、1オンスの地金が約2万5000ドルと高価であるため、ほとんどの投資家は購入できない。

しかし、パラジウムの地金はもう少し手頃で、1オンスのコインやバーでおよそ2400ドルだ。

自分で現物の金属を購入したり保管したりしたくない場合、アバディーン・スタンダード・フィジカル・パラジウム・シェアETF（PALL）は、安全な金庫に保管されているパラジウム地金に投資している。

あるいは、パラジウム鉱山株に投資するのも良いだろう。

白金族金属の波に乗ろう。

あなたの成功を願って。

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