ウォールストリートの「スマートマネー」によるインフレに対する誤った賭け
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- 2021年8月6日
- トピックス
米連邦準備理事会(FRB)のメンバーたちは、こぞってインフレ懸念を軽視しており、それが功を奏している。
ウォールストリートは、インフレ率の数字が高くなることを心配していたが、パウエルFRB議長が繰り返し述べているように、インフレは「一過性のもの」だと判断するようになった。
彼だけではなく、他のメンバーも同様だ。
例えば、クラリダ副議長は、物価上昇の圧力については控えめな発言を行い、物価が上昇し続けた場合、FRBは「ソフトランディング」を図ることができると述べた。
その結果、ウォールストリートでは、一時インフレに強い銘柄を売り、物価上昇に弱い銘柄を買うという動きが見られた。
それはとても間違った賭けだ。
だが、ウォールストリートが、インフレをもはや脅威ではないと捉えていると、どうやって判断できるのか。10年後のブレークイーブン・インフレ率を見てみよう。
米国10年ブレークイーブン・インフレ率とは、ベンチマークとなる米国債(名目金利)と物価連動債(実質金利)の利回り差のことを指す。
米国10年ブレークイーブン・インフレ率は、週単位で見ると昨年から最も低下している。これは、ウォールストリートが、もはやインフレを脅威として捉えていないことを示している。
ウォールストリートの債券トレーダーは、スマートマネーの中でも最も賢いと言われているが、上の図を見ると、彼らはこの「インフレ懸念の低下」の話にまんまと騙されている。
では、なぜ私は彼らが間違っていると考えるのか?
それは、ウォールストリートのエリート達と違い、私の周りでは価格が上昇しているのが明らかだからだ。
食料品店やガソリンスタンドだけでなく、木材やアルミ、銅、住宅の価格も記録的に上昇しており、このような値上げは痛みを伴っている。
住宅価格は1年前に比べて13.3%上昇している。これは、2005年以来最大の増加だ。
太陽光発電の価格も高騰している。そう、太陽電池モジュールのコストは、過去10年間で90%下落した後、今年に入ってから上昇基調を保っている。なぜかというと、モジュールを製造するためのポリシリコンの価格が4倍以上になっているからだ。
そこで、「一過性」という言葉について考えてみよう。 FRBは、こうした物価上昇は今年後半には弱まるとしている。本当だろうか?
その理由は以下の通りだ。
ウォールストリートではなく、働く人々にお金を
ブッシュ、オバマ、トランプの各大統領の下で行われた過去の景気刺激策の大きな欠点は、減税によって資金のほとんどを大富豪や億万長者に流してしまったことだ。
そのお金は浸透するはずだったが、あまり効果がなかった。オバマ大統領が行った景気刺激策の効果が一部しかないと判断されたのもそのためだ。
バイデン政権は1.9兆ドルの景気刺激策を成立させ、労働者階級に1人当たり1400ドルの現金給付を行った。このような人たちは、入ってきたお金をすべて使ってしまう。これは何を意味するのかお分かりだろうか?
インフレだ。
そして、バイデン政権による政策はまだ続く。民主党のコロナウイルス救済法案によって創設された子供用現金給付のおかげで、米国のおよそ3900万世帯が7月から直接現金給付を受けている。
7月からIRSは受給資格のある人を対象に、6歳未満の子供一人につき300ドル、6歳以上の子供一人につき250ドルを毎月給付している。この給付金は、ほとんどの家庭の銀行口座に、毎月15日に直接振り込まれる。
そのお金を、銀行に預けておくか、それとも使うか。私は、使われてインフレに拍車がかかると見ている。
そして、昨年は家に閉じこもっていた米国人も、ようやく外に出られるようになった。彼らのポケットの中には現金が眠っている。
米国だけではない。世界中で、人々は外に出て消費している。その結果、各国で国内総生産(GDP)の見通しが次々と引き上げられている。
銅やアルミ、鉄、木材を資材とする物を買っているのだ。彼らは外食し、小麦、トウモロコシ、大豆などの価格が高騰している。
世界の人々は、第4四半期に入った途端に消費をやめるのだろうか?それとも、経済活動がさらに活発化し、有り余ったドルが経済システムを駆け巡り、価格を加速させるのだろうか?
判断力の鈍化
さらに言えば、FRBはすでにインフレに対する判断力を失っている。FRBは、インフレ率が2%で推移する見込みだと言っているが、どのぐらいの期間なのかについては言及していない。一方、今年に入ってからのインフレ率はすでに数カ月間、3%以上で推移している。
つまり、インフレはすでに到来しているのだ。少なくとも今後数年間は、加速し続けるだろうと見ている。そして、ハード・アセットの価格が「安価なお金」の海によって押し流されるにつれ、価格が一気に急上昇する可能性がある。
インフレは予測が難しいのは確かだ。しかし、私が催眠術師のふりをして、FRBが想定しているような事態が起こっていると暗示したとしても、彼らはインフレの激しさを過小評価しており、そして、それをコントロールする能力を過大評価している。
つまり、FRBはインフレのコントロールを失っている。ウォール・ストリートは聞きたいことだけを聞き、目の前の事実を無視しているのではないかと見ている。
あなたの成功を願って。
ブロドリック
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