半導体の過剰供給が、勝ち組と負け組を分ける
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- 2023年1月4日
- トピックス
こんにちは。Weiss Ratings Japanです。
昨年末、こんな記事が投資家心理に水を差しました。
1年ほど前には世界的な半導体不足によって自動車の製造が追いつかないことがニュースになっていましたが、一転、、、供給が増えすぎ余っている状態になったというのです。
半導体業界に何が起こっているのでしょうか?
結局のところ、半導体は足りているのか、足りていないのか。
「産業の米」と呼ばれスマホやPCだけでなく車から水道メーターまで生活のあらゆる場所に浸透している半導体。
半導体の先行きは経済全体を左右するといえます。
今回はWeiss Ratingsのアナリスト、ジョン・マークマン氏による半導体市場の現実分析をお届けします。
最近、一部の半導体が供給過剰になっているため、投資家はすべての半導体企業の株を売りに出している。
先日、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、半導体の在庫の高騰と需要の低迷に関する特集記事を組んだ。その後、投資家は半導体株を軒並み売却した。
事実と関係なく、安易なシナリオが株価を動かすことを忘れないでほしい。 これは投資家にとって教訓であり、チャンスでもある。
確かに、一部の半導体市場は実際に供給過剰となっている。実際に、この分野の最大手企業の経営陣自身がそう語っている。
例えば、マイクロン・テクノロジー(MU)のサンジェイ・メロトラCEOは、ユタ州リーハイにある同社のコンピュータ・メモリの在庫は社内目標を大幅に上回っていると述べた。 それは、在庫が多すぎて値下げを余儀なくされることを意味する。 この間、マイクロンは短期的な収益への打撃を平準化するため、10%の人員削減も行っている。
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そして、ほとんどのパソコンやデータセンターのサーバーの頭脳である中央演算処理装置の世界最大のメーカーであるインテル(INTC)。同社の経営陣はここしばらく、業界のトレンドうまく掴めていない。
さらに、NVDIA(NVDA)、ASMLホールディング(ASML)、ブロードコム(AVGO)、テキサス・インスツルメンツ(TXN)などを組み入れ上位に抱えるヴァンエック半導体ETF(SMH)は、2009年から2021年までに2000%上昇したが、その後需要が衰え40%の急落を記録した。
その価格チャートを見てみよう。
マイクロンとインテルは、最大のパーソナルコンピュータ市場に製品を供給している大企業だ。ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)、デル・テクノロジーズ(DELL)、アップル(AAPL)などに供給している。
2021年後半、企業や消費者がネットに接続するためのパソコンのアップグレードをやめた頃から、事業は悪化した。そして、そこに半導体株の投資家にとって大きな問題がある。
パンデミックによるロックダウンでは、テレワークやクラウドツールの導入などが一気に進んだ。それにより企業は、ノートパソコンや企業向けソフトウェアのアップグレードを余儀なくされた。これらの売上の多くは、通常の資本的支出サイクルを超えて大きく伸び、2022年に発生するはずの売上は前倒しとなった。さらに、金利の上昇や解雇、一般的な不安から世界経済が減速し、消費者の需要も弱くなっている。
これらの要因により、PCやスマートフォンなどパンデミックの影響を受けるカテゴリー向けの半導体は前倒しで供給過剰となっている。
これは半導体ビジネスのかなりの部分を占めているが、このセクターのすべてではない。実際に世の中が半導体で溢れているわけではないのだ。あまりにも多くの半導体が、時間の経過とともにコモディティ化してしまった。
最先端のデータセンター向けの専用グラフィックス・プロセッシング・ユニットや、電気自動車、発電所、電気自動車の充電インフラ向けの次世代シリコンなど、一部では高い需要が発生している。
オン・セミコンダクター(ON)のような企業は、数年分の生産分を売り切っている。
またWSJは、防衛産業やデータセンター向けのサプライヤーであるラティス・セミコンダクター(LSCC)の経営陣が、顧客の性質からして在庫の増加を懸念していないことを指摘している。
にもかかわらず、オン・セミコンダクターとラティスの両社は、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の半導体に関する記事の影響によって、大きな打撃を受け、それぞれ1.7%、3.5%下落した。
そしてこれが投資家にとっての教訓だ。大きなストーリーは、たとえ根本的な欠陥があったとしても、株価を動かすことができる。 賢い投資家は急落を待ち、サポートレベルを探し、そして賢く投資する。
もう一つ、半導体投資家が留意すべき点がある。
株価は通常、経営陣がアナリストの将来の在庫に関する予想を誘導することで上昇し始める。
エヌビディアのCFOであるコレット・クレス氏は、11月にアナリストに対して、1月末までに在庫水準が正常化する可能性があると述べた。同社の株価は、その後6週間で139ドルから187.70ドルへと35%上昇した。
ガートナーやマッキンゼーの調査報告書によると、半導体全体の売上は2030年までに1兆ドルに達すると予測されている。唯一の弱点はPCだ。ガートナーの研究者は、2023年のPCの販売台数は5.4%の緩やかな減少になると予想している。
要するに、現在の半導体の供給過剰に関するストーリーは、チャンスであると言える。投資家は、自分自身のデューデリジェンスを行った上で、このセクターで気に入っている企業について、魅力的なエントリーレベルを探すべきだろう。
このセクターは一枚岩でもなければ、衰退しているわけでもないことを心に留めておいてほしい。よって私は、オン・セミコンダクターを注視している。
今回はここまでだ。
健闘を祈る。
ジョン・D・マークマン
半導体市場全体を見ると株価は1年で30%以上も下落。しかし、半導体のない世界は考えられません。長期的な視点に立てば、また半導体産業の全体像を把握していれば
今の下落からチャンスを見出すことができるでしょう。
確かに半導体の主要な用途はスマートフォンとPCです。この分野は2020年に需要を先取りしたので数年間停滞するかもしれません。
しかし、自動車や産業用機器の分野はどうでしょうか?
今、日本でも工場の国内回帰が進んでいると言われています。
これは日本だけでなく、アップルも工場を中国から移転し世界中に分散させようとしています。
当然、こうした工場が新設される時には大量の産業用半導体が必要になります。
それを作る企業はどこでしょうか?
ぜひそうした視点で半導体セクターを分析してみてください。
※ 広く一般の投資家に情報としてお届けする事を目的とした記事であり、Weiss Ratings Japanが運営する投資サービスの推奨銘柄ではありません。予めご了承下さい。