アップスタートのAI失策に対応するために検討すべきこと
- 1060 Views
- 2022年5月18日
- トピックス
ありふれたビジネスに人工知能(AI)を適用することで、それらは特別な存在になるはずだった。AIはゲームチェンジャーとして過度な期待をされてきたが、投資家はそうでないことを発見している。
アップスタート・ホールディングス(UPST)の株価は10日、経営陣が通期見通しを引き下げ、6億400万ドル相当のローンがバランスシートに移されたことを明らかにしたため、急落した。
投資家がパニックになったのは無理もない。AIで借り手の信用度を判断すると称する企業には、さらなるリスクが待ち構えている。
アップスタートは2020年12月に株式を公開し、すぐに投資家の注目を浴びた。引受会社は1200万株を20.25ドルで価格設定した。初日の終値は29.47ドルとなり、10ヵ月後には401.49ドルの高値をつけた。
同社があまりにもうまくいっているように思えたからだ。
昨年10月、同社は4-6月期の売上高が前年同期比1180%増となることを発表したため、銀行の取引先がこぞって同社のAIプラットフォームを利用するようになった。当四半期の間、それらの提携先は 28万6864 件の新規貸付を行い、成長には限りがないように思えた。
はっきり言うと、アップスタートのAIプラットフォームはフェア・アイザック(FICO)を破壊するために一から構築されたものだ。何十年もの間、銀行はFICOスコアを用いて信用力を調査してきた。フェア・アイザックは、このデータを提供することで、多額の手数料を受け取っている。アップスタートの台頭までは競合他社も少なく、整然としたビジネスを展開してきた。
カリフォルニア州サンマテオに本社を置く同社は、信用度を調べるために、職歴、学歴、クレジット経験、銀行取引、生活費などのデータを独自のアルゴリズムに入力している。CEOのDave Girouard氏は、消費者のために承認率の向上、債務不履行の減少、ローンの支払額の減少を謳っている。
昨年、株価が高騰し、投資家たちがこぞってその恩恵にあずかろうとしたとき、彼はこのような主張をしたのだが、今年は違う。
Girouard氏はアナリストに9日、金利上昇と幅広い経済の不確実性が貸出に悪影響を及ぼすため、10-12月期決算に続いて成長が鈍化していると述べた。
また、バランスシートに計上されるローンが232%に急増したことについての質問にも答えた。投資家がローンの増加に怯えるのも無理はない。アップスタートの幹部は、同社を提携先に融資を行うソフトウェア・プラットフォームと称している。信用リスクエクスポージャーは無視できるほど小さいはずだったが、そこが問題だった。
Girouard氏は、「ビジネスモデルを変えていない」と断言する。アップスタートは新商品のテストを目的に、自社プラットフォームで組成したローンを常に保持してきたという。ビジネス全体の規模は、単純に今の方がはるかに大きくなっている。
アップスタートの株価は10日に56.4%急落し、33.61ドルで引けた。株価は過去最高値の401.49ドルから94%下落しており、これからもっとひどくなるだろう。
特に、短期金利が上昇し、インフレで消費者が疲弊しているこの環境下で、バランスシートに計上されているローンが6億400万ドルまで膨らむことを許すのは、経営上の失策と言わざるを得ない。投資家は、このような失策の一部が悪い結果になると結論付ける可能性が高い。
その展開は、銀行にとって酷なことではないだろう。貸し倒れはビジネスモデルの一部であるからだ。残念ながら、投資家はアップスタートのビジネスを、AIを使ったFICOスコアで、銀行と貸し手の仲立ちをすることで大きな手数料を掻っ攫うものだと思い込んでいたが、そのような前提は今は外れている。
ちなみに、私がアップスタートを取り上げるのは今回が初めてではなく、2021年8月に171.20ドル、目標株価280ドルで推奨した。株価はわずか25日でその水準に達し、64%の上昇を記録した。
現在33.61ドルのアップスタート株は、予想PERの9.9倍、売上の3.8倍で取引されている。この比率はソフトウェアビジネスとしては魅力的だが、投資家は今後、同社を違った角度から評価する可能性がある。このことから、株式公開価格は20.25ドルになる可能性が高いと思われる。
投資家は、既存のポジションを清算するためにこの機会を利用することを検討すべきである。いつものように、自分自身のデューデリジェンスを行うことを忘れないで頂きたい。
インフレが高騰し、金利が上昇すると、アップスタート(およびその他の企業)のローン返済コストが膨らみ、これらの銘柄に大きな損失が生じる可能性がある。
健闘を祈る
ジョン・D・マークマン
※ 広く一般の投資家に情報としてお届けする事を目的とした記事であり、Weiss Ratings Japanが運営する投資サービスの推奨銘柄ではありません。予めご了承下さい。