ブラックロックの暗い見通しから狙える利益
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- 2023年1月4日
- トピックス
こんにちは。Weiss Ratings Japanです。
世界最大規模の投資運用会社ブラックロックは先日「2023 Global outlook」というレポートを公表しました。2023年の世界金融の見通しを示したもので、投資で資産を築こうとする私たちにとってぜひ一度は目を通しておくべきものです。
このレポートでは、さまざまなデータ・グラフをもとに2023年が非常に厳しいものであることが示されています。
例えば2022年はインフレ動向が最も注目されたテーマでした。そのインフレ率をFRBの目標まで引き下げるにはGDPを大幅に引き下げる、つまり深刻な景気後退を招く必要があると分析しています。
しかし、だからといって投資チャンスがないわけではありません。
景気が悪いほど利益が上がるビジネスもあれば、このレポートで示された3つの下落要因がポジティブに働くビジネスもあります。
今回は、Weiss Ratingsシニアアナリスト、ジョン・マークマン氏による「先行きが暗いと考えるブラックロックでさえ強気に分析している投資先」の分析をお届けします。
世界最大の資産運用会社の経営陣は、長期的なインフレ率の上昇と、米連邦準備理事会(FRB)が株式投資家に差し伸べる救いの手を懸念している。
先日、ブラックロック(BLK)は2023年の「Global Outlook」を発表した。本レポートでは、株価や債券価格を当面の間、リセットすることになる3つの要因を特定している。
一方で、オン・セミコンダクター(ON)には強気な分析が行われている。その理由を説明しよう。
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ブラックロックは、早くからグローバリゼーション(世界の経済、文化、人口が相互依存を深めることで、世界経済はより平和で豊かなものになる)を提唱していた。要するに、自由に取引をし合える世界なら、友好関係を築くことができるはずだ、という理屈だ。
実際には、グローバルサプライチェーンはあっという間に武器化した。
製造業はアジア、特に中国に移転し、指導者たちはアフリカや後発開発途上国でグローバルな影響力を行使しようとした。金融資本はロンドンやニューヨークに集中し、金融業者やコンサルタントはオフショアリングや税金逃れの手段を構築し、世界の先進国は安価な商品と低い借入コストに食いついた。
ブラックロックのチーフ投資オフィサーであるフィリップ・ヒルデブランド氏は、この時期を「グレート・モデレーション」と呼び、40年間にわたり安定した経済成長と低インフレが続いたと述べている。今、それが終わり、投資家はより多くの変動と頑固なインフレに備えなければならないと考えている。
ヒルデブランド氏は、Global Outlookの中で、世界の中央銀行と投資家にとって当面悲惨な生活を強いることになる3つの主要なレジーム要因を指摘している。これらの流れは、もはや定石であり、簡単に変えることはできない。
まず、少子化で世の中が高齢化し、高齢者の介護にお金がかかるようになる。また、1980年代以降の日本のように、訓練された労働者が不足し、公共部門の予算が吹き飛ぶことになるだろう。
第二に、脱グローバリゼーションによって、製造コストの低減をもたらしたグローバルサプライチェーンが元に戻しつつある。この傾向は、半導体の設計や製造が急速に政治色を帯びてきていることを見れば明らかだ。欧米では高価な新施設の建設が計画されている。
3つ目のレジーム要因は、化石燃料からクリーンな代替エネルギーへの急速な移行だ。
ウクライナ戦争は、非炭素型燃料の採用を加速させ、現在進行中の化石燃料への投資を混乱させている。ブラックロックのストラテジストは、無秩序な移行は燃料不足を招き、最終的に世界の経済活動を混乱させる可能性があると主張している。
しかし、投資家にとっては明るい兆しもある。
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オン・セミコンダクターは、インフラ、電気自動車、EV充電ステーションなど、クリーン・エネルギーのあらゆる側面にチップを供給する有益なビジネスを構築している。
アリゾナ州フェニックスに拠点を置く同社は、クリーンエネルギーへの移行に必要な次世代電力スイッチの主要材料である炭化ケイ素の製造において、主要なプレーヤーとなった。
同社は一方で、EVへの移行に必要なチップやコンポーネントへの先行投資による利益を享受している。
8月上旬には、パワーマネジメントシステムおよびセンサーに対する旺盛な需要が供給を上回りつつあることを報告した。オン・セミコンダクターと共同出資して、生産能力を拡大するという異例の措置をとった企業もいる。また、将来の電気自動車に必要な部品の供給を確保するために、既存の契約を2029年まで延長した企業もいる。
ブラックロックは、EVの需要イメージや先進国市場の個人消費に全面的に賛成しているわけではない。
ヒルデブランド氏は、次の不況が来た際に、FRBが投資家を救うために金利を引き下げることはないだろうと言う。このような動きは、いわゆるFRBプット、すなわち経済活動の荒波を滑らかにするための、安価な資金注入の終焉を意味するものである。
投資家は、機能している一般的なトレンドに注目するべきだろう。
オン・セミコンダクターの株価は65.38ドルで、PERは14.5倍、PSRは3.3倍となっている。46.6%の粗利益率とクリーンエネルギーのフランチャイズの可能性を考慮すれば、極めて割安な価格設定といえるだろう。
またすぐにご紹介していきたい。
健闘を祈る。
ジョン・D・マークマン
マークマン氏の分析にあるように、ここ数年でグローバル化の武器化が鮮明になりました。石油や天然ガス、新疆綿などが現実の武器として政治に使われた事例をご存知だと思います。
そんな中、マークマン氏は「機能している一般的なトレンドに注目するべき」と言っています
FRBの動向や金融政策などではなく、現実に発生しているものに注目すべき、ということです。
良し悪しはともかく、クリーンエネルギーへの転換は簡単に止まりません。すでに法案ができ、お金が動いている現実のトレンドです。
そのトレンドに載っている現実の企業(すでに契約を勝ち取り製造している)がオン・セミコンダクターです。
ぜひ2023年は現実のトレンドに注目して投資判断を行ってみてください。
※ 広く一般の投資家に情報としてお届けする事を目的とした記事であり、Weiss Ratings Japanが運営する投資サービスの推奨銘柄ではありません。予めご了承下さい。