天才エンジニアが目をつけた包装企業
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- 2021年11月11日
- トピックス
Weiss Ratings Japanの安居です。
前回のメルマガでは最近人気の「レバレッジETF」をテーマにしたのですが、
やはり投資している、検討している人も多かったようで、
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レバレッジETFに興味を持っていて購入しようか検討中でしたか、危険な部分なんて全く目が行っていませんでした。
CHI 様
レバレッジは必ず儲かると思ってましたが、そうでもないんですね。<中略>もっと、ナスダックやレバレッジについて学びたいです。これからもよろしくお願いします。
マミ 様
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といった感想をいただきました。
レバレッジETFが悪い投資というわけではないのですが、何事もメリット・デメリット両方知っておくことが大切です。
最後に質問した「レバレッジETFがどうやって3倍の値動きになるように運用しているのか?」については知らない方も多いようなので、また機会があれば取り上げたいと思います。
前回のメルマガをご覧になっていない方は下記で公開しているのでぜひご覧ください。
↓
ところで、Weiss Ratingsのブログ記事は読んでいますか?
米国株の情報が増えたとはいえ、その多くは米国株に投資する日本人の情報です。
Weiss Ratingsのブログはアメリカのアナリストが直接情報を届けてくれる数少ないメディアなんです。
もし読んでいないなら、ぜひ読んでみてください。
ほとんどの日本人が知らないお宝銘柄が見つかるかもしれません。
例えば、ジョン・マークマン。
彼は、
・世界初の株式スクリーニングシステムを開発し、マイクロソフトと共同特許を2つ取得したコンピューターエンジニア
・ピューリッツァー賞を受賞し、フォーブスなど著名なメディアに有料記事を提供し、5冊の投資本を出版した金融ジャーナリスト
・ファンドマネージャー、アナリストとして40年以上も投資に関わってきたベテラン
という凄い人なんです。
そんな人が書いてくれた記事が日本語で読めるメディアなんてなかなかありませんよね。
ということで、今日取り上げるのは、ジョン・マークマンの
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という記事。
この記事で取り上げられたお宝銘柄を僕の視点から紹介したいと思います ^^)
まずは記事の概要を見てみましょう。
今年6月、ソニーが新型イヤフォンを発表しました。
https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP612015_Z00C21A6000000/
そのイヤフォンのパッケージが「オリジナルブレンドマテリアル」というリサイクル可能な紙素材だということで注目されています。
このことはニュースになっていたのでご存知の方もおいかもしれません。
でも、「へえ〜ソニーも環境に気を使ったり頑張ってるな〜」で終わらないのがベテランアナリストジョン・マークマンです。
彼はここから「これから環境にやさしい包装のニーズが加速する!」と考えました。
ESG投資とは、短期的な利益ではなく、環境などもしっかり考えて長期的に成長できる企業に投資しよう、という考え方。
世界最大の資産運用会社ブラックロックはESG資が急速に成長すると予測していますし、
https://www.blackrock.com/jp/individual/ja/strategies/sustainable-investing
この1年でESG投資がさらに加速したという調査結果も出ています。
https://toyokeizai.net/articles/-/408511
普段、グーグルで株価を調べているなら、「CDPスコア」という表示が追加されたことに気づいているかもしれません。
↑の赤枠部分にあるヤツですね。
これは気候変動への取り組みを評価したものなのですが、気候変動もESG投資の重要な要素の一つです。
グーグルがこの表示を追加したということは、気候変動への取り組みが配当利回りや株価収益率などと同じく、重要な投資判断の材料だということです。
パッケージをリサイクル可能な紙素材にすることがそんなに環境にやさしいの?と思うかもしれませんが、プラスチックの原料は石油ですし、海洋プラスチックゴミ問題は何年も解決していません。
プラスチック製品のリサイクルも、新しく作るよりコストがかかり品質も落ちるので、あまり普及していないのが現状です。
ESG投資が進む中、ジョン・マークマンは
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投資家は、家電製品のパッケージをプラスチックから持続可能な紙に移行するという、数十億ドル規模の機会に注目し始めるべきだ。
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として、アムコア(AMCR)がベストな選択肢だといいます。
アムコア(AMCR)は、1860年に設立された歴史ある包装・製紙メーカーで、
・ナビスコやオレオで知られる「モンデリーズ」
・炭酸飲料でシェアを握る「コカコーラ」と「ペプシコ」
・ネスカフェやキットカットで知られる「ネスレ」
・パンパースやアリエール、ジレットやH&Sなど同社の商品を使わずに生活するほうが難しい「P&G」
など、スーパーに行けば必ず目に入る世界的有名ブランドのほか、
・売上世界6位の製薬企業の「グラクソ・スミスクライン」
・ヘルスケア企業で時価総額世界5位の「アボット・ラボラトリーズ」
さらにはジョンソン&ジョンソンと提携してコンタクトレンズのパッケージなどを共同開発したりと世界的大企業を顧客に持っています。
ジョン・マークマンは記事の中で、
・業績が改善している
・環境にやさしい包装が求められている
・同社は買収戦略を行うだけの規模を持っている
・最近の低迷は買いのチャンス!!
と分析しています。
さて、ここまでが記事の概要でした。ここからは僕が気になって個人的に調べた内容です。
まず気になったのは、どんな包装製品を作っているのか?です。
特にESG、環境にやさしい包装について調べてみました。
アムコアのウェブサイトを見ると、
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In January 2018, Amcor pledged to develop all our packaging to be recyclable or reusable by 2025.
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と書かれていました。
直訳すると、
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2018年、Amcorは2025年までにすべてのパッケージをリサイクル・再利用可能に開発することを誓います。
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ということです。
続けて
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Most of our packaging is already designed to be recyclable or reusable. Remaining challenges will be overcome through Amcor’s leadership and innovation, in close collaboration with others:
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とも書かれています。
直訳すると、
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Amcorのパッケージのほとんどは、すでにリサイクル・再利用できるように設計されています。残りは、Amcorのリーダーシップとイノベーション、そして他社との密接な協力によって克服されるでしょう。
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ということです。
これから製品開発をする、技術を持った競合を買収するという話ではなく、
すでに環境にやさしい包装を製造・販売していて、これからさらに力を入れていくるということですね。
実際の製品を見てみると、「サトウキビ」で作られたコーヒー豆のパッケージや
https://www.amcor.com/sustainability/products
これまでリサイクル不可だった熱滅菌対応パッケージをリサイクル可能にしたネスレのキャットフード
https://www.amcor.com/sustainability/products
100%リサイクル素材で、二酸化炭素排出量を35%も削減した洗剤ボトル
https://www.amcor.com/sustainability/products
リサイクル可能なのはもちろん、鮮度を長持ちさせる特殊な素材を使い食品廃棄物を減らすことが期待できるパッケージ
https://www.amcor.com/sustainability/products
などがありました。(ほかにも色々ありますよ)
続いてWeiss Ratingsの評価を見てみましょう。
株価は現在12ドルほど。
PER(株価収益率)は20程度と決して低くはないですが、S&P500の平均PERが28程度なので、それと比較すると割安な銘柄だと言えます。
アムコアは歴史ある企業ですが、「AMCR」というティッカーで上場したのは2019年のことです。
以前から上場はしていたみたいですが、2019年にBemis Companyを買収したことで、ティッカーが新しくなったようです。
そこから現在まで株価は10%ほど上昇。S&P500は同じ期間で60%以上上昇しているので、過去の株価だけをみると魅力は感じませんね。
でも投資は過去の株価に対してではなく、これからの株価に対して行うもの。
Weiss Ratingsの評価を見てみると、Reward (利益性)が「A-」で、これはアマゾンより高い評価です。
配当利回りも4%と近くとかなり高くDividend(配当評価)も最高評価を獲得しています。
(Weiss Ratingsの配当評価は配当利回りだけでなく、配当に関わるさまざまな要素を総合的に評価しています)
Growth (成長性)とSolvency (財務状況)も最高評価なので、強い成長性と財務的な安全性を兼ね備えた銘柄だと言えますね。
Volatility (株価の変動性)が低く評価されていますが、過去の株価をみると確かに、短期間で10%以上の上昇・下落が何度もあります。
アムコアに投資するなら短期的な損失は覚悟した方がいいかもしれませんね。
次に簡単にですが、業績を見てみましょう。
こちらは過去7年間の売上と純利益です。
横ばいだった売り上げが2020年に30%以上も上昇。2021年もさらに売上、利益を伸ばしました。
160年以上の歴史ある企業、しかもすでに大手と提携し業界シェアを握る成熟企業が30%も業績を伸ばすなんてすごいですね。
ESGへの関心はここ数年で大きくなったので、環境にやさしい包装製品を開発するアムコアに追い風が吹いているのかもしれません ^^)
ということで、簡単にまとめておきます。
アムコアは、
・ESGに関心が集まるなか、環境にやさしい包装を手掛けており、世界的有名企業を顧客に持つ歴史ある企業
・160年の歴史持つ老舗でありながら2020年は売上を30%以上も伸ばした成長企業
・株価の変動性が高く短期的な損失は覚悟した方がいいが財務的に安全で、Weiss RatingsのReward (利益性)が 最高ランク(A-)の期待銘柄
・さらに、これまで株価が伸び悩んでいるため、配当利回りが4%近く、配当評価も最高レベルの高配当銘柄
・そして、ジョン・マークマンが分析するように、環境にやさしい包装が求められる中で、長年培った開発力と競合を買収できる資本力を持ち大きなチャンスを掴める可能性を持った銘柄
だと言えます。
ジョン・マークマンがアムコアに注目した理由は、ソニーが紙素材で作られたイヤフォンのパッケージをリリースしたからでしたね。
この流れが止まらないとしたら、アップルのAirPods (ワイヤレスイヤフォン)も紙パッケージを採用するかもしれません。
コカコーラのペットボトルも、よりリサイクルしやすい素材に変わるかもしれません。
食品トレーも、買い物袋も、ただのプラスチックではなく自然由来の素材に変わるかもしれません。
そうなった時、その包装、パッケージはどこが作るんでしょうか?
そんなふうに想像すると、老舗企業で、包装という地味なビジネスで、株価も横ばいのアムコアがものすごく魅力的な銘柄に見えてきませんか?
Weiss Ratingsのアナリストはこうしたお宝銘柄を無料ブログで公開してくれるので、ぜひブログも頻繁にチェックしてみてくださいね。(メルマガで出していない記事もあるので)
P.S.
Weiss Ratingsは1万銘柄以上ある全ての米国株を日々評価しています。
格付け情報のほか、アメリカ人アナリストの記事もたくさんあるので、ぜひご覧ください
P.P.S
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