スポティファイが低迷している理由
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- 2022年2月28日
- トピックス
スポティファイ・テクノロジー(SPOT)の経営幹部たちは迷走しているようだが、これはポッドキャストなどの論争のせいではない。
現在の問題は焦点の欠如であり、それを解決するのはより困難である。
同社は2月22日(米国時間)、アップル (AAPL)の CarPlay と Android Auto に対するハードウェアの回答である 「Car Thing」の一般販売開始 を発表した。
そう、スポティファイがハードウェアを製造するようになり、ビジネスとして大きな失敗をしそうなのだ。
世界の優れた企業はまず、ニッチを見つけ、競争上の優位性を築き、その優位性を活用する新たなチャンスを見つけていく。
それは、シンプルだが長年かけて実証済みの原理であり、効果がある。
「 Car Thing 」は、その目標からはほど遠い。
クレジットカードサイズのタッチスクリーンとモバイルSpotifyアプリへのフルアクセスを搭載した80ドルのプラスチック製デバイスであるCar Thing は、Spotifyを車内に持ち込むことができるとされている。
しかし実際は、このデバイスはインターネット接続、データ保存、演算処理計算を必要とするスマートフォン用の「高価なリモコン」にすぎない。
スマートデバイス時代の中で、賢くない機器だ。
また、未熟な企業の経営陣が次にヒットさせたい製品を探しているときに着手しがちな製品でもある。
それよりも重大なのは、「Car Thing」がSpotifyの最悪のバージョンであることだ。
アップルやアルファベット(GOOGL)の自動車への進出は凄まじく、スポティファイが太刀打ちできないのが現実となっている。
消費者は、最新のコネクテッドカー(ネットに接続された自動車)やトラックを選ぶにあたって、CarPlayやAndroid Autoに対応していることを求めるようになっている。
これらのソフトウェアが備わっていれば、Spotifyはもちろん、「Google Maps」や「Waze」、「Apple Music」といったインフォテイメントアプリを車内で手軽に利用できるからだ。
しかしながら、Car Thingでは他社のアプリは使用できず、できるのは2010年に戻ったかのような重たい動作のSpotify体験だけである。
皮肉なのは、Car Thingもスマートデバイス時代に対応してつくられたという点だ。古い車には最新のインフォテイメントシステム(情報と娯楽を提供する情報通信システム)が搭載されていない。
Car Thingは、ユーザーが最新のスマートフォンを持っていることを前提に、そうした古い車やトラックにSpotifyを搭載している。
そして、ここが問題となる。
ユーザーがiPhoneやAndroidのスマートフォンを持っている場合、そもそもCar Thingは不要なのだ。
ドライブモードに設定すれば、AndroidのGoogle MapsがSpotifyと完全に連携し、選曲や再生はすべて音声で行える。
この点だけでもCar Thingの機能を上回っており、しかも無料で、優れたスマートフォンのプロセッサにアクセスできるのだ。
スポティファイは要点を見逃している。
「Car Thing」の発売は、Spotifyの幹部たちが空回りしていることを表している。
ストリーミングビジネスの成熟化に伴い、新しいビジネスを成長させたいと考えているようだが、アップルやグーグルのシステムに対応していない古い車をターゲットに据えていることに戸惑いを感じる。当然ながら、こうした車の市場は縮小しているからだ。
このような企業の浪費は、大きなコストとなる。
スナップ (SNAP)は、同社の人気モバイルアプリ「スナップチャット」を補完する物理的なスマートグラス「スペクタクルズ」を発売した際、投資家に大目玉を食らった。
最近では、ペイパル・ホールディングス (PYPL)の幹部たちがソーシャルメディア事業のピンタレスト (PINS)の買収に乗り出し、同じ運命に見舞われた。さらに、ドラフト・キングズ(DKNG)は、幹部たちがその3倍の規模を持つ英国のギャンブル企業、エンテインの224億ドルでの買収を発表した後、酷評された。
スポティファイの株主にとって、Car Thing の発売は最悪のタイミングである。
株価は昨年も不調に終わり、2022年は36.4%下落している。昨年11月に301ドルで取引された株は、本稿執筆時点で148ドル前後まで一気に下落した。
また、ジョー・ローガン氏のコンテンツが炎上したことも悪影響を及ぼした。ニューヨークタイムズの報道によると、スポティファイの幹部たちは、物議を醸したポッドキャスターに3年半で2億ドルを支払ったという。
ローガン氏が問題なわけではない。彼の番組は、今でもインターネット上で最も人気のあるポッドキャストである。
スポティファイは、ユーザー一人当たりの平均売上高の伸びの鈍化に悩まされている。
同社は2月初めに、プレミアム会員数が前年同期比16%増の1億8000万人に拡大したと報告したが、その成長を支えたのは、東南アジア、インド、ブラジルでの大規模な販促キャンペーンであった。
ユーザーの収益化能力を示す主要な指標であるARPU(Average Revenue Per Unit)は、前年同期比でわずか3%の増加にとどまっている。
現在の株価はわずか149.38ドルで、予想PERの139.3倍、売上高の2.7倍で取引されている。
現在のARPUの伸びを考えると、株価は130ドルの水準まで容易に戻ってくる可能性がある。
健闘を祈る
ジョン・D・マークマン
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