ネットフリックス広告の勝者
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- 2022年7月8日
- トピックス
世界で唯一のグローバルメディア企業に、デジタル広告がやってくる。これはメディアの分水嶺であり、投資家にとっても大きな変化をもたらすだろう。
ネットフリックス(NFLX)のCEOであるTed Sarandos氏は先週、ストリーミングメディア企業である同社に広告が正式に登場することを明らかにした。今回の発表は、多くの企業にとって大きな変化であり、ゲームチェンジャーとなる。
ネットフリックスは間違いなく、エンターテインメント・メディアにおいて最も重要な企業である。カリフォルニア州ロスガトスを拠点とする同社は、2021年に170億ドルを生産取引に費やし、2億2千万人の有料会員を持つために恐れられ、消滅の噂が大げさに誇張されている。
2007年にストリーミング配信を開始して以来、同社の経営陣は広告に対して断固として反対してきた。彼らは、ネットフリックスの意義は途切れることのないオンデマンドのエンターテイメントであると正しく主張した。それが集客のための差別化要因であった。
2019年のコンシューマー・エレクトロニクス・ショーでは、大手テレビメーカー各社の幹部が、ネットフリックスのアプリを薄型テレビに導入する案件をアピールし、ネットフリックスの専用アプリがなければ、テレビはほとんど売れないと主張した。
広告がすべてを変えた
Sarandos氏が、広告は「絶対にありえない」と言った後、成長は鈍化していった。同社は4月に、1-3月期に20万人の加入者を失ったと発表している。
広告付きの低価格帯は、犠牲を伴うものの、サブスクリプションの成長を復活させる可能性がある。
Sarandos氏は先週、Hollywood Reporterに対し、広告によって他の方法ではサービスを受けられないような顧客にもネットフリックスを提供することができると語った。特に新興市場においては、彼の言うとおりではないかと思う。
残念ながら、広告の導入は、月額料金が安くなるなら中断しても構わないという既存の契約者との共食いにもなりかねない。
発表後の反応を見る限り、ネットフリックスの投資家は利益率への不安から株を売っている可能性が高い。それは、株価にとって短期的な逆風となる。
しかし、投資家が注目すべきはそのことではなく、むしろ、これらの広告から利益を得ているのはどの企業なのか、ということだ。
長期的には、ネットフリックスの広告は、トレード・デスク(TTD)とアルファベット(GOOGL)にとって大きな勝利となる。
勝者となる企業
前者は、プログラマティック・デジタル広告の出稿プラットフォームを運営している。自社のソフトウェアを使ってデジタル広告の在庫をリアルタイムで購入し、そのコマーシャルをコネクテッドTV、ウェブ、その他のデジタル領域にシームレスに配置することができる。グローバルに展開するネットフリックスは、究極のコネクテッドTVプラットフォームと言える。先週までは、そのようなレベルに到達することは夢物語だった。
残念ながら、トレード・デスクの株主にとっては、短期的には少し不利な状況かもしれない。ネットフリックスが広告販売でグーグルやコムキャスト(CMCSA)の一部門であるNBCUniversalと提携するという信憑性のある報道があったからだ。
繰り返しになるが、私は投資家の皆さんはまずトレード・デスク株を売り、これが最終的に何を意味するのかについては後にお答えできればと考えている。
NBCユニバーサルは、ネットフリックスにとって奇妙な選択だろう。現在、同社はネットフリックスのマイナーな競合相手であるアップル(AAPL)と密接に広告を手掛けている。また、同じくネットフリックスの挑戦者であるPeacockとは兄弟関係にある。
グーグルの方が興味をそそられる。YouTubeの子会社の売上はネットフリックスに匹敵し、急速に成長している。グーグルは現在、同じくネットフリックスの敵であるウォルト・ディズニー(DIS)の広告パートナーでもある。
一方、同社はデジタル広告のパイオニアであり、最大のネットワークを持ち、Google Cloudとの連携も魅力的だ。広告やクラウドコンピューティングの分野でネットフリックスを取り込むことができれば、株価が上昇することは間違いないだろう。
余談だが、ネットフリックスが最終的にGoogle Cloudに移行した場合、現在Amazon Web Services経由で提供しているアマゾン・ドット・コム(AMZN)にとっては大きな損失となる。
短期的に見れば、株価が下がる方向に進むのは目に見えている。投資家は現在、ネットフリックスのデジタル広告を追加することは、このセクターにとって正味のマイナスになると推測している。
しかし、それは全くの見当違いだ。
ネットフリックスがデジタル広告の猛攻撃に参加することで、すべてが良い方向に変化する。世界最大のコネクテッドTVプラットフォームでグローバルなターゲット広告を行い、デジタル広告の在庫が増えることになる。アナログよりデジタルな広告への移行が加速され、ゲームチェンジャーとなる。
このチャンスは、投資家が理解するのに時間がかかりそうだ。常にご自身でデューデリジェンスを行うことを忘れないで頂きたい。
健闘を祈る
ジョン・D・マークマン
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