アメリカは「時代遅れ」にされるのか?
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- 2025年4月8日
- トピックス
4月2日
トランプ大統領は米国との貿易関係に基づく
「相互関税」の導入を公表しました。
これは全ての国・地域に対し追加で一律10%の関税を導入した上で
貿易赤字などの状況を踏まえてさらに上乗せするというものです。
これを受け、日経平均株価が一時1600円以上急落したりS&P500種先物指数も急落するなど株価にも大きな影響を与えました。
「トランプ関税問題」は数多くのニュース媒体で取り上げられており、
今、全世界が注目している話題だと言えます。

トランプ氏の政策が経済にどのような影響を与えるのか不透明で、市場が不安定になっている今、私たち投資家が取るべき行動とは一体何なのでしょうか?
30年以上にわたり世界中の経済、株式の研究を続けるブロドリック氏は
多くの投資家が投資を控えている中、
「市場が大きく動き出す前に、今すぐ資産を守る準備を始めるべきだ」
と述べ、数々のデータをもとに
「1つの有望な投資先」を教えてくれました。
もしあなたが
「今後アメリカがどうなっていくのかその先行きについて知りたい…」
「市場環境が不透明で米国株投資が不安…」
あるいは
「この下落から有望な投資チャンスを見つけたい!」
と思われているならばブロドリック氏の記事をご覧ください。
アメリカは「時代遅れ」にされるのか?
少しだけ「アメリカ例外主義」について話そう。
これは、アメリカの金融市場、特に株式市場が他の国々の市場よりも良いパフォーマンスを見せるという考え方に基づいた主張だ。
そして過去10年間、その通りになってきた。
次のチャートを見てほしい。これはS&P 500のリターンを他の世界市場と比較したものだ…

過去10年間で、S&P 500(SPY)が232%上昇していることがわかる。
これを、世界市場:+144.59%(SPDR Portfolio MSCI Global Stock Market ETF(SPGM))、ヨーロッパ市場:+90.87%(SPDR EURO Stoxx 50 ETF(FEZ))、そして日本:+68.46%(iShares MSCI Japan ETF(EWJ))と比較してみてほしい。
何がアメリカを推進しているのだろうか。
アメリカを「例外的」にしている主な要因は7つある。
1.強力な経済基盤
アメリカは歴史的に見ても、強力で多様性のある経済、安定したGDP成長、広大な消費者層、そして革新主導型の産業を持つ。
左の画像は1980年以降のアメリカのGDP成長率であり、右の画像は個人消費支出のチャートである。
どちらを見ても、右肩上がりで強力な経済基盤と言える。
2.アメリカ企業の支配力
世界最大・最高の企業はアメリカにある。
世界時価総額でトップを走る企業を見てみれば、アメリカの支配力は一目瞭然である。
上位10銘柄だけを見ても、サウジアラムコを除く9つがアメリカ企業だ。(アップル、エヌビディア、マイクロソフト、アマゾンなど)
これらの企業は現在世界経済を牽引しており、その支配力は今後も勢いを増していくだろう。
3.流動性の高い資本市場
とりわけS&P 500は、世界で最も流動性が高く透明性の高い株式市場の1つだ。
そのため、国際投資家にとって非常に魅力的だ。
この3つ目の要因があるから世界中から投資資金が集まっている。
4.基軸通貨の利点
米ドルが世界の基軸通貨であるという地位は、外部の経済ショックに対するクッションの役割を果たしている。
これは、米ドルが国際貿易や投資において主要な決済通貨として広く使用されているためだ。
実際、世界貿易の半数以上がドル建てで行われており、これによりドルは国際的な金融取引における信頼性を高めている。
5.イノベーションと技術のリーダーシップ
アメリカは何十年にもわたりテクノロジー分野のリーダーであり、これが企業の収益と株価の高騰を支えている。
アップル、エヌビディア、マイクロソフト、アマゾンという名だたる企業の10年間の株価成長率を考えてみれば、米国がテクノロジー分野を牽引するリーダーであることがわかるだろう…
6.規制の安定性
アメリカ市場は比較的強固な規制フレームワークを持ち、それが投資家の信頼と市場の健全性を保証している。
例えば、アメリカ証券取引委員会(SEC)による厳格な監視体制が情報の不正行為を防ぐ役割を果たしている。これにより、投資家は安心して資金を投入することができるだろう。
7.投資家の文化
アメリカでは株式投資文化が浸透しており、401(k)プランやETF、アメリカへの投資の概念がこれを支えている。
これらは非常に素晴らしい。
だが問題はこの一部が変化しつつあり、そしてそれがあまり良い方向に向かっていないことだ。
そしてこの事態が驚くべき変化を引き起こしている。
こちらを見てほしい…。
資金は今、ヨーロッパへ流れ込んでいる
ウォール・ストリート・ジャーナルは次のように報じている
「今年の最初の2カ月で、投資家は主にヨーロッパ株に投資するETFに20億ドル以上を投入した。これは2024年後半、これらの同じファンドから85億ドル以上が流出していたことからの劇的な転換を示している。一方、アメリカ株式ETFへの資金流入ペースは2024年末の2カ月に比べ2025年最初の2カ月で鈍化している。」
なぜこのようなことが起きているのか?
4月2日に発動予定のトランプ大統領の関税政策がその一因となっている。
(3月26日執筆)
関税戦争とともにアメリカの外交政策は大きく変化した。
現在のアメリカはロシアとより密接に連携しているように見える。
ヨーロッパはこれを武器製造とインフラへの投資を促す警鐘と受け止めており、世界中の投資家がここに注目しているのだ。
そして同時に、トランプ大統領はアメリカ国内での大規模な政府投資計画を中止した。
これはバイデン大統領が導入した代表的な計画のことである。
・インフラ投資および雇用法:10年間で1.2兆ドルをかけてアメリカのインフラを近代化する計画だった。
・インフレ抑制法:エネルギー生産に投資し、グリーンエネルギーを推進するため7400億ドルを承認していた。
・半導体および科学技術法:半導体の研究開発および製造を強化するために2800億ドルを割り当てていた。
これらの資金の多くはまだ使われておらず、今後も使われないだろう。
それがこうした成長産業への投資を阻害するのだ。
もしかするとあなたは、「アメリカが多額の借金を抱えたせいで、これらの計画を終わらせた」と感じているかもしれない。
しかし裏を返せばこれは、特定の成長産業へ偏らず、政府支出が様々な分野への投資を促進するということだ。
現在、大規模プロジェクトを推進しているのはアメリカではなく、ヨーロッパや中国だ。
そしてそれが投資家のお金をアメリカから他の地域に引き寄せている。
イーロン、緊縮政策を導入
さらに、投資家が他に資金を移している理由として、イーロン・マスク率いる政府効率化省(Department of Government Efficiency:DOGE)が緊縮政策を導入していることが挙げられる。
歴史的に見ると、市場は緊縮政策を好まない。
DOGEは官僚を解雇し、政府の研究資金をカットしている。これは先述の「要因5:イノベーションと技術のリーダーシップ」に直接影響する。つまり政府の研究資金がなければ、アメリカは中国にさらに速いペースで遅れを取る可能性があるのだ。
世界知的所有権機関(WIPO)によれば、2024年に中国は約1,642,507件の特許出願を行った。
一方アメリカの出願件数は約518,364件だった。
3倍以上の出願件数というこの差は、今後さらに広がると予想されているのだ。
そして「要因6:規制の安定性」についてだが、トランプ大統領がそれを台無しにしてしまっている。安定を求める投資家は海外へと目を向けるのではないだろうか。
アメリカが遅れを取る
以上を踏まえ、次のチャートを見てほしい。
これは、JPモルガンが世界各地で今後10年間にどの程度のリターンを得られるかについて示した予測データだ。
JPモルガンによると、アメリカの大型株は日本、ユーロ圏、中国、ヨーロッパ不動産、新興市場に次いで6位に位置している。
最近、アメリカ市場はトランプ大統領が関税政策に柔軟性を示したことで上昇した。
私は今後もこの傾向が続くことを期待している。
一方で、大手ファンドマネージャーに倣い、一部のポートフォリオを海外に多様化することを検討しても良いだろう。
特にヨーロッパは有望に見える。以下はFEZ(SPDR EURO Stoxx 50 ETF)の週足チャートだ…
FEZがブレイクアウトしているのが分かるだろう。この動きは始まったばかりに見える。
もしアメリカ例外主義が終わりを迎えようとしているなら、他の市場において「例外的」なリターンを見つけることができるかもしれない。市場が大きく動き出す前に、今すぐ資産を守る準備を始めるべきだ…
検討を祈る
ショーン・ブロドリック
いかがでしたでしょうか。
30年以上にわたり世界中の経済、株式の研究を続けるブロドリック氏によればトランプ関税政策とイーロン・マスク率いる政府効率化省の緊縮政策によって
市場の注目はアメリカから日本、ヨーロッパ、中国へと移りつつあることがわかりました。
トランプ大統領が関税政策に柔軟性を示したことで米国株が今後上昇傾向に向かう可能性も示唆されていましたが、
もしあなたが米国株を主体にしたポートフォリオを形成しているのであれば、他国の市場へ目を向けるチャンスと言えるかもしれません。
ブロドリックをはじめ我々Wealth Onも米国株の持つ成長力等を考えると、依然として米国株を投資の中核に据えるべきだと考えています。
ただし、今のように地政学的・政策的な変化が加速しているタイミングでは、米国株をベースにしながらも、他国市場への分散的視点を持つことが、リスク管理や収益機会の幅を広げる意味でも有効的になる可能性があります。
そのため今回ブロドリック氏が取り上げていたヨーロッパ株、FEZ(SPDR EURO Stoxx 50 ETF)をポートフォリオに加えることを検討してみてください。
P.S
今、米国株以外に目を向けているアナリストはブロドリック氏だけではありません。
分散投資を始め、安全性を考慮した20年以上の投資経験を持つナイルズ・マティブ氏、
そして
Weiss Ratingsの格付け責任者を務めるギャビン・マゴール氏も米国株以外の世界株にも注目しているのです。
実際彼らが編集を務める月刊Weiss Ratingsの最新4月号では、
「米国偏重から脱却し、世界に目を向けよう」

世界株の広大なユニバース(投資対象)

というタイトルのもと、2人のアナリストによる見解が述べられた上で今注目すべき世界株が取り上げられました。
ここで取り上げられた銘柄は主要米国株が下落傾向にある中で+8.01%と力強い上昇を見せています。

そのためもしあなたが米国株の中で様々なセクターに分散して投資を行っているのであれば、
大衆投資家が目を向けていない米国株以外の“世界株”へ視野を広げることで分散によって資産を守りつつ、
新たな成長機会で資産成長を加速させられるかもしれません。
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月刊Weiss Ratings4月号を読み、米国株以外の世界株へ分散投資を始める
※ 広く一般の投資家に情報としてお届けする事を目的とした記事であり、Weiss Ratings Japanが運営する投資サービスの推奨銘柄ではありません。予めご了承下さい。