レバレッジをかけるか、「セーフマネー」戦略をとるか…
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- 2021年4月6日
- トピックス
2011年に米国で公開された映画「マージン・コール」* では、ある投資銀行で、若手住宅ローンアナリストがCEOに対し、膨大な額の住宅ローンが不良債権化していることを知らせるシーンがある。
(*この映画は日本では劇場公開されず、2012年にDVDが発売されている)
アナリストの語ったメッセージとは、「資産の価値が急落し始めている。競合他社が危機を察知する前に、迅速に撤退しなければ、会社が破綻する可能性がある」というものだった。
ジェレミー・アイアンズ演じるCEOは、次のように応える。
「この商売には3つの方法がある。最初になるか、賢くやるか、イカサマをするかだ。私はイカサマはしない。このビルには精鋭たちが集まっていると思いたいが、最初になるのはごく簡単なことだ。」
今週、数十億ドル規模の「ファミリー・オフィス」企業が自爆した後、私はこのシーンについて考えた。倒産したファミリーオフィスは、国内外の様々な企業から資金提供を受けていた。
これはアルケゴス・キャピタル・マネジメント社のことである。同社の話は、多くの投資家にとって教訓となる。
一体、何が起きたのだろうか?
ファミリー・オフィスとは、一握りの超富裕層の顧客やその家族のために資金を管理する投資会社のことだ。
アルケゴス・キャピタル・マネジメント社は、2013年にタイガー・マネジメントを退社した元アナリストのビル・ホワン氏が経営している。彼は、ウォール街の伝説的な人物、ジュリアン・ロバートソン氏の弟子だ。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙によると、ロバートソン氏の虎の子だったホワン氏が、米国とアジアの幅広い銘柄に高いレバレッジをかけて投資していたことが判明した。
同社は、「スワップ」と呼ばれるデリバティブを用いていた。スワップの価値が下がり始めると、レバレッジが作動し、損失がどんどん膨らんでいった。
アルケゴス社は、世界の金融センターに拠点を置く大手投資銀行など有名な取引先企業に掛け合い、打開策を交渉しようとした。
同社は、市場を混乱させることなく、秩序正しくリスクを削減することに銀行が同意することを願っていた。
しかし、「マージン・コール」に登場する架空の投資銀行と同じく、これらの銀行は「最初になる」方が良いと判断した。 損失を最小限に抑えるために、競合他社に先んじて売却することにしたのだ。
『フィナンシャル・タイムズ』によると、ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーは、3月26日金曜日だけで190億ドルもの株式を大規模な取引で処分したと報じられている。
ある銀行員はこう語っている。「現実に投売り(英語ではfire sale)が起きる際は、一番にドアから飛び出さなければ火傷をすることになる。そこに仁義などは関係ない、誰が最初に逃げるかが問題なのだ。」
アルケゴス社の事件で巻き添えを食らった例は枚挙にいとまがない。バイアコムCBS(VIAC)やテンセント・ミュージック・エンターテイメント・グループ(TME)もその巻き添えをくらった企業だ。VIACの株価は2週間以内に61%も下落した。
ここからどんな教訓が得られるだろうか?
まず、このような状況は強気相場の初期に見られるものではない。むしろ、株価が大きく上昇した後、投資家が浮ついて、リターンを最大化するためにリスクを重ねようとする時に見られる現象だ。
また、「セーフマネー」流の銘柄では、このような大胆な投資がなされることはあまりない。
実際、セーフマネー・レポートの購読者の方なら、ご自分のモデルポートフォリオ投資がこの混乱に巻き込まれていないことをよくお分かりのことだろう。
最後に、この例からレバレッジを高くする際の危険性がよく分かる。
レバレッジを使う場合は、過剰な投機として使うのではなく、慎重に節度を持って使わなければならない。それは、数十億円規模のヘッジファンドから「ファミリーオフィス」、個人投資家まで、すべての投資家に対して言えることだ。つまり、「セーフマネー」戦略にこだわるなら、より良い結果を得ることができるということだ。
それではまた
マイク・ラーソン
*広く一般の投資家に情報としてお届けする事を目的とした記事であり、Weiss Ratings Japanが運営する投資サービスの推奨銘柄ではありません。予めご了承下さい。