V字回復にはほど遠い現状
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- 2020年8月10日
- トピックス
金融業界内では、今後「V字回復」がやってくると言われている。
しかし、世界中の政府がいまだに以下のような数兆円規模の景気対策を実施しているのだろうか?
- 先週、EUでは2.1兆ドルという前代未聞の経済対策が承認された。
- 各国の政府は国債をまとめて発行することで資金調達を図っており、そこで集められた資金の多くはコロナショックの被害をもっとも受けた国に分配されるという。
- 配れられたお金は貸し付けではなく、助成金として付与されるため、各国に返済の義務はない
- 今年の初めに実施された対策で調達された6,300億ドルもの大金は、あくまで気候変動対策の資金であり、今回の新型コロナウィルスとは関係ない。つまり、6,300億ドルに2.1兆ドルが追加される形になる。
一方、アメリカでは家賃の支払い猶予や週600ドルの失業手当の期間が切れるため、現在、連邦政府が第二次緊急経済対策の立案を急いでいる。
緊急経済対策の詳細はまだ決まっていないものの、おそらく数兆ドル規模になると思われる。実際、3月に可決されたCARES ACT(The Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security Act=コロナウイルス支援・救済・経済安全保障法)には2.3兆ドルものコストがかかっている。
国の負債は、26.5兆ドルに昇り、国民はすでにアメリカのGDPの132%を借りていることになる。もし、「V字回復」が間近に迫っているというのなら、なぜ各国の政府は負債を抱えてまでも数兆ドルの対策をとっているのだろうか?
「V字回復は来ない」、それがその答えだ。
アメリカ国内では、政府は返済の見込みのないお金を使い、企業はドミノ倒しのように倒産している。さらに失業者たちは仕事に就けず、中国との新たな冷戦の危機にも瀕している。これらのことに加えて、今まさに新型コロナウイルスの第二波が押し寄せてきている。
今、投資家は何をすべきだろうか?
私は今、堅実に成長している市場と落ち目の市場、そのどちらにも注目している。
このような状況で、良いパフォーマンスを収めているのは、貴金属や仮想通貨、国債、公共事業、多額のキャッシュフローを有する企業など、国の負債による影響を受けにくい会社に投資している投資家である。これらの企業は典型的にはハイテク株であり、だからこそナスダックや現金を保有する大手企業の株は好調なのだ。
例えばS&P 500では、トップ10の銘柄以外、株式市場は落ち込んでいるように見える。
最悪の投資先は、負債の負担によって潰されてしまう会社である。金融株(銀行、保険会社、クレジットカード)、小売、飛行機や船を買うために何十億もの借金をしている運輸企業の株などは、どれも大打撃を受けるだろう。
つまり、負債に強い銘柄は好調で、負債に依存にしている銘柄は不調だということだ。実に単純な話だ。
弊社の格付けリストは、このような負債に強い企業の株を見つけることや、不調な銘柄を避けることに大いに役立つはずだ。ぜひチェックしてみてほしい。
健闘を祈る。
トニー・サガミ