企業信用のひずみがさらに拡大!
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- 2020年8月13日
- トピックス
2020年4-6月中に、54の企業がデフォルト(債務不履行)に陥った。これは2009年の世界金融危機直後以来最も多い水準で、さらに悪化する可能性がある。まだ現時点では最高潮に達してはいないのだ。
ムーディーズは、2021年までデフォルトが悪化すると予測している。なぜだろうか?これまで以上に借金が増えたのは、COVID-19の流行前から既に低評価だった質の低い企業だ。
そして、この信用危機は私たちがこれまで見たことがないほど、はるかに広範囲に及んでいる。例えば、小売業や消費者サービス企業は、店頭販売の落ち込みと債務の圧迫によりバタバタと倒れている。
その点を考えると、高利回りのジャンク債はどうなるはずだろうか。
価格が急落するはず、と考えるのではなかろうか?
そしてこのようなダメな債券や、そのような債券にばかり投資している投資信託、ETFを所有している人が、まず資金を失うはずと思うのではなかろうか。
しかし現在そのようなことは一切起きていない!
実際のところ、7月にジャンク債は2011年10月以来の最高の月を迎えた。
金利低下と信用リスクプレミアムの低下が重なり、先月の価格は5%近く上昇した。これは異常なことだろうか? 当然、異常だ。
バンク・オブ・アメリカ(Bank of America:BAC、格付け「C」)の専門家らによると、今回の回復は過去40年間でみられたものとスピードも性質も異なると述べている。これほど大規模に企業信用にひずみがでた前例はない。
しかし、このようなことが起きている理由はいたって簡単だ。FRBが社債を買い支えているからだ。トップクラスの高格付けの投資適格債だけではなく、ジャンク債もである。
何か意味があるのだろうか。FRBは市場のもう一つの窮地に介入すべきだろうか。高利回りを求めて過剰にリスクを取る人は、ラッキーな場合には利益を得て当然だが、そうでない場合は損しても自業自得と言えるのではなかろうか。
特に買い支えによって、投資家や企業が馬鹿げたことを続けるよう助長されている場合はどうだろうか?
馬鹿げたことと言うのは、過去にFRBが山ほど資金を拠出して結果が葬りさられたために、お金を貸しすぎ、借りすぎの状態が将来も続くということである。
あるいは、死ぬべき企業を何年もギリギリの状態で延命させ続け、経済を「ゾンビ化」させていることも、馬鹿げていることに含まれるかもしれない。実際、最近のドイツ銀行(Deutsche Bank:DB、格付け「D」)の分析では、米国の上場企業の5社に1社が「ゾンビ」で、2010年代初頭の水準の2倍のとなっていることを明らかにした。
これらの企業は借金だらけだ。支払いを賄えるほどのお金を稼ぐことができない。しかし、超低金利と必要以上に寛大な借入条件のおかげで、(かろうじて)生き残ることができている。
答えは明白だと思うが、これは結局のところ経済を悪化させる悪政策だ。また、信用サイクルの悪い時期に投資家による不良ファンドや不良証券の購入に拍車をかけている。
では、代わりにあなたは何をすればいいのだろうか?ジャンク債を少なくとも今は、ショート売りしないように。もちろん、購入もしないように。
より高品質で高格付けの債券や、 収益を生み出している「セーフマネー」銘柄に注目しよう。これらの企業に政府からの手当ては必要ない。自力でうまくやっている企業なのだ!
金、銀、鉱業株などの代替資産も見逃せない。それらの資産は強く、耐久力があるので、 市場を大幅に凌いでいる。
また、経済がゾンビ化すると、他にもその影響が長引くということは忘れないでおこう。例えば日本では、経済のゾンビ化で銀行が空洞化し、長期金利が数年に渡って類を見ないほど低下した。
だからこそ、私があなたにお勧めしたいことは、金融などの脆弱な分野の株に近寄らないことだ。2018年に入ってから、金融分野の企業群は狂ったように不振に陥っている。
これは、長期国債の価格は上昇する一方、利回りは0%に向かって低下すると私が考える理由の一つでもある。つまり、売却益だけでなく、(非常にわずかだが)利息のために長期債ETFを保有することも可能と考える。
それではまた。
マイク・ラーソン