アートが持つ“投資”としての可能性
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- 2023年11月9日
- トピックス
なぜ、大富豪たちはアートに興味を持つのでしょうか?
ZOZO創設者で、日本でも有数の実業家の前澤氏は2016年、ジャン=ミシェル・バスキアの作品を5730万ドルで落札。
その6年後、この作品はオークションにかけられ、
7500万ドル(最終価格8500万ドル)という価格で売却されたのです。
その差はなんと2770万ドル、約48%のリターンです。
大富豪たち全員がこのリターンを狙っているわけではないと思いますが、アート作品には、芸術的な側面だけではなく、投資的な側面もあるのです。
実際、このオークションを請け負ったフィリップス社の副社長は
「ダウの下落など金融市場が不安定化する中で、バスキアの出した“48%のリターン”は、有形資産への逃避(美術市場の活性化)を示唆するかもしれない」
と発言しています。
このように、芸術的な魅力だけでなく、投資としての魅力を持つアート作品。
今回は、暗号資産や美術品などのオルタナティブ資産と言われる分野にも精通するWeiss Ratingsアナリストのナイルズ氏の記事をご覧ください。
インフレ率が高い時期は、どんなアセットクラスが最も適しているだろうか。
何世紀もの間、富裕層が財産を守り、増やすために持っていた資産は何だろうか。
そして、昨年だけではなく1995年から2021年まで、上場株式や債券などの伝統的資産を凌駕した資産は何だろうか。
それは、ファインアートだ。
ファインアートとは、芸術以外の意味を持たない純粋な芸術と言われる。
ファインアートは、上場株式や債券などの金融システムの外に存在するにもかかわらず、その金融システムを動かしている人々にとっては常に好都合な資産であった。
理由は無数にある。
- 優れたアート作品は、視覚的にも知的な側面においても刺激的である。
- 地位を象徴するものとして認知されやすい。
- 唯一無二のもので、取って代わることはない。
- 比較的持ち運びやすい。
- 追跡や課税が容易ではなく、金融当局に認識されることすらない。
実際、名作は世代から世代へと受け継がれ、その価値は天文学的なスピードで上昇する可能性がある。
このメガトレンドは、イタリア・ルネサンス期のフィレンツェのメディチ家にまで遡る。メディチ家は銀行家として名を上げ、そこで増やした莫大な資産のかなりの部分をアートに注ぎ込んだ。
約550年前にメディチ家が注文した最も有名な絵画のひとつである「ヴィーナスの誕生」を考えてみよう。サンドロ・ボッティチェッリのその作品は、おそらく結婚式の贈り物として制作されたものだろう。
現在の評価額はおよそ5億ドルだ! これは単なる異常値ではない。
例えば昨年、
- ビットコインは65%暴落した。
- ナスダックは33%下落した。
- ダウ・ジョーンズ米国不動産指数は25.9%下落した。
- S&P500種株価指数は18.1%下落した。
- ブルームバーグ債券インデックスは13%下落した。
これとは対照的に、ナイト・フランクのウェルス・レポートに掲載された調査によると、優良美術品は、米国のインフレを抑え、その過程で他のすべてのアセットクラスを上回り、昨年も平均29%上昇した。
他の研究でも、美術品は他のアセットクラスをはるかに長期にわたって上回っていることが示されている。
現代アートは、特に価値が上がることが証明されており、1995年から2021年まで、毎年平均13.8%の上昇率を記録している。これは金よりも2倍近く、不動産や株式市場よりもはるかに高い。
現在のようにインフレ率が平均を上回っている場合、パフォーマンスはさらに良くなる。
裕福な一家がこれほど多くの財産をアートに投資してきたのも不思議ではない。
- ベンチャーキャピタルのアンドリーセン・ホロウィッツ創設者のマーク・アンドリーセン
- 資産運用会社のブラックロックCEOのラリー・フィンク
- 資産運用会社のダブルライン・キャピタルCEOのジェフリー・ガンドラック
- ヘッジファンドのサード・ポイントCEOのダン・ローブ
など、今日のヘッジファンドの巨頭、ベンチャーキャピタリスト、銀行のエリートたちも同じことをしている。
実際、アートネットが毎年発表するアートコレクター・トップ200のリストには、金融業界の人物が多い。
はっきりさせておきたいのは、だからといって、アートはバカにできないとか、常に上昇するという意味ではない。アート市場もまた、時として一時的な不況に見舞われることがある。
しかし超一流のアート作品は、強気相場が続くたびに、史上最高値を更新し続けている。
さらに重要なのは、他の多くのアセットクラスが下に動いているときでも、アートは上に動くことができるということだ。前にも書いたように、昨年は他のほとんど全てが損失を被ったとき、アートは上昇した。
現代アートは2008年の不況期にも同じことをやってのけ、S&P500が37%下落する中、6.3%上昇した。
実際、以下の表が示すように、現代アートは米国株や米国社債と負の相関関係にある。他がほぼ全て下落しているときに上昇するのはよくあることだ。
これらを総合すると、以下の3点に興味を持つ人にとって、アートに触れる機会を増やすことが賢明なアイデアであろう。
- プライバシー
- 安全性
- 大きなリターンの可能性
ファインアート投資の障壁とその克服法
ファインアートに投資する際の最大の障壁は、常に価格である。
その理由は、あなたが買うべき最高のアートは地元のギャラリーに展示してある安くて無名な作品ではないからだ。
あなたが、偶然立ち寄ったギャラリーで、500ドルで売られていた作品を買ったとしよう。しかし、残念ながらあなたがどんなにその作品を気に入ったとしても、その価値が100万ドルになることはない。そして、その作品のアーティストが、次のアンディ・ウォーホルである可能性は限りなく低い。
これは、美術界に確かなコネクションを持つ情報通のバイヤーにだって起こることだ。バイヤーでさえ、無名のアーティストの中から投資価値のある作品を見つけ出すことは滅多にできない。
だが、すでに100万ドルもする作品で100万ドルを稼ぐのはずっと簡単だ。100万ドルもする作品は、すでにマーケットが確立され、それを欲しがるコレクターたちにとって十分な価値がある有料な美術品と言える。そのため、その価値はどんどん上昇していく可能性がある。
しかし、1枚の作品に100万ドルも支払えるような人物は少ない。つまり、1枚あたりのコストが高いからこそ、参入障壁が高いのだ。
また、多くの作品を購入できないことも障害となる。たとえ数十万ドル持っていたとしても、そのお金を十分に分散させるのは難しいだろう。たった1枚の作品に大金をかけ、最高の結果を望むのは、余程のリスク許容度をもつ投資家か、情熱だけで買っている人だけだろう。
健全な投資戦略では、5種類、10種類あるいは20種類の質の高い美術品やその他収集品、有形資産に資金を投入する。
これが最高級のアートの世界を、つい最近まで富裕層が独占し続けた主な理由である。
ただ、幸いなことに、JOBS法が状況を変えた。
JOBS法(新規産業活性化法)は、認定されていない(適格投資家でない)投資家がIPO前の企業に資金を投入することを妨げていた壁を取り払った。
そして、フラクショナル・オーナーシップによって、美術品に投資ができるようになった。フラクショナル・オーナーシップとは、物品の所有権を一部または数株単位で購入することを意味している。
つまり、共同保有するということだ。
たとえば、100万ドルの作品の所有権の一部を500ドルで購入する。その作品の価値が200万ドルに上がれば、あなたが買った所有権は1000ドルの価値になる。
先ほど書いたように、500ドルで買った無名のアーティストの作品が値上がりする可能性は低いが、100万ドルの作品が200万ドルになる可能性は十分にある。
あなたは作品を家に飾ることはできないが、これまで一部の大富豪だけが恩恵を受けてきたアート市場から、あなたも恩恵を受けることができるようになるかもしれないのだ。
私はこの分野をチェックし続ける。
幸運を祈って。
ナイルズ
※ 広く一般の投資家に情報としてお届けする事を目的とした記事であり、Weiss Ratings Japanが運営する投資サービスの推奨銘柄ではありません。予めご了承下さい。