原子力発電への回帰によって注目されるウラン
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- 2022年4月15日
- トピックス
ウクライナの戦争は、エネルギーのリセットを引き起こしている。
欧米諸国政府はロシアの石油・ガスへの依存を見直しつつあり、投資家にとっては大きなチャンスである。
ボリス・ジョンソン首相は先日、英国が小規模なモジュール式原子力発電所の開発に着手することを発表した。新しいエネルギーの道は、ウラン資産にとって大きな勝利である。
クリーンなエネルギー源としての原子力の出現は、ありそうでなかった。
原子力発電は40年間も軽蔑されてきたが、今、それが急速に変わりつつある。
世界の原子力発電所の数は1996年にピークを迎え、全電力の17.5%が原子力発電所で発電されていた。
それ以来は世論が冷え込み、原発を稼働させようという政治的な意志が弱まっていった。
原子力の衰退は、さまざまな出来事が重なって起こったのだ……。
環境保護運動が世界的に盛り上がりをみせた1970年代、原子力は格好の悪者だった。
放射能汚染は目に見えないが、致命的なものだった。1979年に公開されたハリウッドの大作「チャイナ・シンドローム」は、その年の初めにペンシルバニア州の原子力施設であるスリーマイル島で起こったメルトダウンの様子を映した。
その後の疫学調査によって、この地域のガンの増加は認められなかったが、原子力施設周辺での生活への不安は飛躍的に高まった。
他の原発トラブルは、それほど穏やかなものではなかった。
1986年、チェルノブイリ原発の完全メルトダウンにより、ウクライナ北部の1000平方マイルにわたって6万8000人が過疎化した。
また、2011年には地震と津波により福島第一原子力発電所が被災し、15万4400人の日本の市民が避難した。
世界中の原子力発電所が閉鎖され始めた。
現在、それらの設備で発電している電力は、世界の電力の10.3%に過ぎない。しかし、Our World in Dataがまとめた調査によると、原子力発電はクリーンで環境に優しく、持続可能で、統計的に他の発電方式よりはるかに安全であることが判明した。
ほとんどの人はそのプロセスが分かりにくいと感じるかもしれないが、最も本質的なレベルでかみ砕いて説明すると、決して難しいことではない。原子力施設は、基本的に非常に大きな茶釜である。
発電は、中性子がウラン原子に衝突してウラン原子が半分に分裂(核分裂)し、膨大な放射線と熱エネルギーが放出されるところから始まる。
核分裂物質のロッドを水で冷やし、蒸気を発生させ、タービンを回して発電させる。
石炭や天然ガスの発電所でもタービンを使って発電させているが、ウランははるかに効率のよいエネルギー源であるという違いがある。
暖炉の丸太ほどの大きさの棒1本で、家庭100軒分の電力を1年間まかなうことができる。
ウランはクリーンなエネルギー源でもあり、電気を生成するために使用しても、大気中に炭素を放出することはない。ゼロエミッションを目指す世界では、このことが特に重要である。
かつて原子力発電の技術革新の中心地であった英国では、1997年には15の原子力施設が稼働し、国内電力の27%を発電していた。
2024年までに原子力施設は2つしか残らないため、ボリス・ジョンソン首相はロールス・ロイス・ホールディングス(RYCEY)の力を借りて、この流れを変えたいと考えている。
ロールス・ロイスの原子力潜水艦用エンジンをベースに、より小型の発電設備の構築を目的としており、これは二酸化炭素の排出を避け、ロシアの石油やガスに依存する経済にとって、完璧な解決策かもしれない。
投資家はどう対応すべきか
カメコ(CCJ)は、現在の地政学的危機と、必然的な原子力発電への回帰の両方を利用することができる唯一の立場にある。
カナダのウラン生産会社である同社は、世界最大の鉱床を保有しており、経営陣はその資産価値を最大化するために、戦略的に市場から供給を排除していいる。
2月の電話会議でティム・ギッツェルCEOは、2016年以降、カメコが1億9000万ポンドのウランをスポット市場から撤去したとアナリストに語った。
ギッツェルCEOは、オランダ、チェコ、ポーランド、エストニア、スロベニア、セルビアが現在、原子力発電の選択肢を検討していると指摘する。
また、欧州連合が原子力を気候変動にやさしい投資対象として位置づけ、環境・社会・ガバナンス(ESG)ファンドがこの分野への投資を開始する許可を与えている。
ウラン価格は2022年には46.1%増の63.50ドル/ポンドに上昇しており、カメコは年間5300万ポンドの生産ライセンスを取得しているが、現在の時価総額は121億円に過ぎない。
長期投資家は、目先の下落に乗じてカメコ株の購入を検討する必要がある。常に自分自身でデューデリジェンスを行うことを忘れないで頂きたい。
健闘を祈る
ジョン・D・マークマン
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