インフレを促進する戦争
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- 2022年6月15日
- トピックス
ロシアは西側との戦争に勝利しているように見え、その影響は投資家にとって極めてネガティブなものである。しかし、新しい反撃の手段は手の届くところにある。
ロシア中央銀行(CRB)は10日(米国時間)、主要貸出金利を150ベーシスポイント引き下げ、ウクライナ戦争が始まった2月以来4回目の利下げとなった。
CRB関係者によると、欧米のインフレが高騰する中、ロシアのインフレは鈍化しているという。それはエネルギー株の購入を検討すべきであることを意味している。
ロシアの経済破綻は決定的なものになるはずだった。モスクワの西側店舗を閉鎖し、世界を股にかけるオリガルヒを巻き込み、前例のない世界規模の制裁の波が、経済を内部から窒息させるはずだった。
ロシアは自滅し、経済的近代化のごみ箱に落ちると思われていた。
今のところ、そう順調にはいっていない。
- 現在、ロシア国内の金利は侵攻前の水準に戻ってきている。
- ルーブルは対米ドルで世界最強の不換紙幣であり、2022年には16%上昇した。
- そして、かつて空っぽだった店の棚には、再び商品が並ぶようになった。
さらに重要なことは、ブルームバーグの報道によると、プーチン大統領がロシア人に相変わらず人気があることである。
しかし、このように希望が見えてきたとはいえ、決して明るい未来ばかりではない。
欧米企業、ロシアから撤退へ
エール大学の追跡調査によると、現在までに約1000社の欧米企業がロシア経済から撤退している。
マイクロソフト(MSFT)は10日、400人の従業員を全員解雇し、同国での新規事業を完全に打ち切ると発表した。
企業世界では、デスクトップとAzureインテリジェントクラウドの両方でマイクロソフトのソフトウェアを使用しているため、これは大きな打撃となる。
WordやExcelのファイルを送受信できないことは、世界で戦おうとするロシア企業にとって大きな問題となるだろう。
また、ロシアのインフレ率は年率17.1%と2002年以来の高水準で推移しており・・・改善されつつあるとはいえ、まだまだその道のりは長い。
ウォールストリートジャーナルは、ロシア中央銀行はロシア経済が依然として高いハードルに直面していることを認識していると報道している。欧米からの投資の減少や国内での物価上昇により、2022年の残り期間と来年は経済成長率がマイナスになると思われる。
欧米の投資家にとっては残念なことだが、世界の穀物収穫量の25%を占めるウクライナで、悲劇的で無意味な戦争を続けるプーチンのやり方を変えるには、このような方法では不十分だろう。
国内が比較的安定していることと、西側諸国がロシアの石油への制裁を拒否していることが、彼を勇気づけた。相場師たちは戦争が夏以降も続くと見ており、彼らの無策は農産物やエネルギー価格の上昇圧力になっている。
もう一方では、FRBが行き詰っており、米国の中央銀行は、ほとんどコントロールできないインフレとの戦いに挑んでいる。
S&P500指数は、消費者レベルのインフレが予想を上回ったことを受けて、10日に2.9%急落した。5月の消費者物価指数(CPI)は、年率換算で8.5%急上昇し、1981年以来の最高値を記録した。
投資家は、FRBが短期金利を積極的に引き上げ、経済成長をつぶして需要を失わせることを恐れている。
これは悪魔のような経済的ねじれであり、ロシアはウクライナで恐ろしい戦争を始め、世界中の西側諸国の経済を破壊することになる。
ただし、勝者はいる。
10日はエネルギー株が他の市場とともに下落したが、エネルギー株は歴史的に好調な年であった。
非分散型の上場投資信託(ETF)、エネルギー・セレクト・セクター SPDR ファンド (XLE)は、S&P500の中で最大の石油、ガス、消耗燃料、エネルギー機器企業を対象としている。保有銘柄には、エクソン・モービル(XOM)、シェブロン(CVX)、EOGリソース(EOG)、コノコフィリップス(COP)などがある。この4社だけでファンドの持ち株の53%以上を占めており・・・そして先週、エクソン・モービルは史上最高値を記録した。
同ファンドの配当利回りは2.5%、経費率はわずか0.1%で、過去6ヶ月で52%以上上昇している。
小幅な引き下げを余儀なくされているが、エネルギー株の長期トレンドは強くポジティブである。
投資家の皆さんは目先の低迷期を利用する必要がある。株価が高値更新を再開するのは時間の問題である。
いつものように、取引に入る前にご自身でデューデリジェンスを行うことを忘れないで頂きたい。
健闘を祈る
ジョン・D・マークマン
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