加速するリチウムと電気自動車
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- 2022年9月6日
- トピックス
バイデン大統領と米議会の民主党は、共和党の助けなくインフレ抑制法を可決させた。なぜ共和党が賛成しなかったのか、その理由はよくわからない。なぜなら、この法案には、より安価な処方薬、家庭のエネルギー効率向上のための税額控除、より早い税還、さらには赤字削減など、素晴らしい内容が含まれているからだ。
投資家にとって、この法案で際立つのは、電気自動車(EV)だ。
7900億ドルの法案のうち、約3860億ドルはグリーンエネルギーとEVに重点が置かれている。
- 電気自動車を新規に購入した人には、7500ドルの控除が適用される。まったくの偶然だが、フォード(F)とゼネラルモーターズ(GM)は、EVの価格を同額分引き上げた。関係はないと言ってはいるが、彼らの最終損益を助けることになるため、株にとっては強気だ。
- また、新しい法案は、EV減税を販売時点でも利用できるようになり、メーカーごとの20万台という上限をなくし、利用可能期間を10年間延長するなど改善されている。
- また、中古のEVを購入した人には、4000ドルの控除がある。以前はなかったものだ。これにより、EVブームが高所得者層から一般の米国人にまで広がる可能性がある。
最後の点について、ゼロエミッション輸送協会(ZETA)のエグゼクティブディレクターであるジョー・ブリットン氏は、ワシントン・ポストに、「あらゆる所得レベルの米国人が電動化に触れることは、私たちの移行能力に実に良い影響を与えるだろう」と語っている。
しかし、一部のメーカーやEV購入者にとっては、この税額控除は米国内で最終組み立てを行った自動車にしか適用されないという問題がある。これは、国内での製造を促進するためのもので、バイデン大統領は、米国の労働組合によってEVを生産することを望んでいる。しかし、他の国でEVの組み立てを行っている多くのメーカーは、足元をすくわれることになる。
すでに、それを変えようとする動きが出てきている。例えば、メルセデス・ベンツ・グループ(DMLRY)は電気自動車SUVのEQSをアラバマ州タスカルーサで組み立てる予定で、フォードは新しい電気自動車F-150トラックをミシガン州、オハイオ州、ミズーリ州で生産を行い、EVメーカーのリビアン(RIVN)はジョージア州に新しい組み立て工場を建設し、州や地元の奨励金15億ドルを受け取っている。
そのため、多少の調整は必要であるものの、米国におけるEVの未来を賭けたレースは始まっている。コックス・オートモーティブが発表したこのチャートは、第2四半期に米国で爆発的に伸びたEVの販売台数を追跡したものだ:
新車販売台数全体が前年同期比で20%以上減少したにもかかわらず、第2四半期の米国における完全電気自動車(EV)の販売台数は66%増となった。ハイブリッドEVの販売台数は減少したが、それでもEV全体の販売台数は41%以上増加した。
確かに、ガソリン車の販売台数は数百万台ではあるが、単純に販売台数を比較している訳ではない。そして、インフレ抑制策によるインセンティブで、この傾向はさらに加速されることを示している。
これは、一部の電気自動車メーカーにとってだけ強気な話ではなく、リチウムメーカーにとっても強気なものだ。
- トヨタ自動車(TM)は、2030年までに米国で自動車用電池に約34億ドルを投資する。現在、トヨタの米国販売台数の約25%が電気自動車だが、2030年までに70%まで引き上げる計画だ。
- フォードは、韓国のパートナーであるSKイノベーションとともに、約114億ドルをかけてテネシー州とケンタッキー州に電気自動車のバッテリー工場を建設している。フォードのEV販売台数は6月に77%増加し、2030年には世界販売の40%がEVになると見込んでいる。
- ゼネラルモーターズは、LG化学と共同で、米国内に4つの新しいバッテリー工場を計画しており、すでにオハイオ州に1つの工場を建設している。
- 前フィアット・クライスラーのステランティス(STLA)は、インディアナ州に25億ドルの電池工場を建設している。
- フォルクスワーゲン(VWAPY)は、チャタヌーガに2200万ドルのEVバッテリー研究所を所有している。これは、フォルクスワーゲンが北米でのEV販売を強化するために471億ドルを投じるほんの始まりに過ぎない。来年から新しいバッテリーを展開する予定で、現在、製造拠点を探している。
これは、「うたた寝」モードに入っていたリチウムの価格が、そろそろ目覚めようとしていることを示す手がかりだ。
リチウムの統一市場はなく、ベンチマークもないが、世界最大のリチウムの最終市場である中国での炭酸リチウム価格のチャートを見てみよう。
リチウムの価格は、昨年の大幅な上昇の後、今年に入ってからは横ばいで推移し、底値を固めていることが分かる。次の大きな波が来ていると言えるだろう。
この波に乗るには、いくつかの方法がある。例えば、個別銘柄を選択することができる。
だが、個別株はすべての人に向いているわけではないので、もう2つのアイデアをご紹介したい。グローバルXリチウム&バッテリー・テックETF (LIT)は、リチウム採掘と電池のサプライチェーンに関わる企業を多数保有しており、経費率は0.75%となっている。また、グローバルX自動運転&EV ETF(DRIV)は、EVメーカー、リチウム鉱山、テクノロジー企業などを幅広く保有している。経費率は0.68%。
両ファンドとも、この新しい支出法案に対する期待が盛り上がる中、過去1カ月間、S&P500を見事にアウトパフォームしたが、シグマ・リチウムには及ばなかった。
確かに、この株もファンドも変動が激しいため、気の弱い人には向いていない。しかし、私は、政府が企業にお金をばらまくとき、つまり、インフレ抑制法を実施するとき、私はバケツを持って、その恩恵を受け止めるのが賢明だと考えている。
どのような選択をするにしろ、必ず自分自身でデューデリジェンスを行って欲しい。
あなたの成功を願って。
ブロドリック
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