シリコンバレーの最注目トピック
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- 2023年10月10日
- トピックス
こんにちは。Weiss Ratings Japanの安居です。
今日はニュース記事で目にした、「今、シリコンバレーが最も注目しているトピック」を中心に、AI銘柄への投資戦略お届けしたいと思いますが、その前に直近の相場を振り返っておきましょう ^^)
7月末まで、S&P500は年初来で+20%と大きく上昇してきたのに、8月に入ってから様子が一変。
下落の理由はいろいろですが、個人的には大きく2つの要因があると思います。
①インフレ指標に伴う金利上昇
アメリカのインフレ率(CPI)は着実に下がっています。一方、引き続き雇用は絶好調で、失業率は低下し、平均賃金は上昇。賃金が上昇するとインフレ率が再燃するリスクがあるため、最近はCPIのようなインフレ指標より、賃金動向の方が市場への影響が大きいようです。
8月17日に発表されたFOMCの議事要旨でも、
・再びインフレ率が上昇する可能性
・さらなる利上げが必要になる可能性
を示唆しています。
金利予想を見てみると、数ヶ月前は主流だった「年内の利下げがある」という見方は減り、年内にもう一度利上げがあるという見方がじわじわ増えてきています。
金利の不透明さは株式市場の不安定さに直結するので、しばらくは荒い値動きが続くかもしれません。
債券金利の推移を見ると、3ヶ月債券利回り(青)はほとんど横ばいですが、赤の2年債、緑の10年債の利回りが大きく上昇していますよね。一般に株式リターンと債券利回りはシーソーの関係にある(債券金利が上がると株式リターンが下がる)と言われています。
特に8月に入ってから10年債の利回りが急上昇。株は下がり、当然、円も下がっています ^^;
長期投資なら気にしなくていいと思いますが、びっくりしないためにもインフレ指標(特に雇用、賃金関連)と金利はチェックしておいた方が良さそうですね。
どこまで波及するかまだわかりませんが、2021年に話題になった中国不動産大手の恒大集団がついに破産申請しました。
なぜニューヨークで破産申請したのか?50兆円近い負債の債権者は誰か?中国国内の景気はどうなるのか?
特に債権者が誰かは注目です。シリコンバレー銀行やシグネチャー銀行が破綻したように、アメリカの金融機関の中には懐事情が厳しいところも少なくないでしょう。もしそうした金融機関が中国恒大の債権者だったら、、、今回の破産でトドメを刺されるかもしれません。
中国恒大についてはまだまだ不透明な部分が多いですが、こちらも要チェックです。
②AI関連銘柄のブームが一巡
こちらは今年の株式市場を牽引した代表的なAI関連銘柄、エヌビディア(青)、Meta(オレンジ)、Microsoft(水色)、Google(黄色)の株価チャートです。
MicrosoftやGoogleが横ばいに見えますが、エヌビディアが+200%近く上昇しているだけで、こちらも40%前後と大きく上昇しています ^^;
そんなAI関連銘柄ですが、見ての通り、7月真ん中〜後半をピークにいずれも下落…
8月に入ってYahooファイナンスが「The AI stock bubble may be popping(AIバブルが弾けるかもしれない)」と報じるなど、AI関連銘柄にネガティブな見通しが広がっています。
とはいえ、年初来+200%も上昇したエヌビディアが、短期的に20%や30%調整することは想定内、驚くようなことではありません。
個人的に気になるのはアップルです。
年初来でほとんど一直線に上昇していましたが、今月10%ほど急落。半月で10%も下落するのはコロナショック以来だと思います。
主な理由は直近の決算でiPhoneやiPadの売り上げが予想を下回ったため。とはいえ、全体では予想を上回る好決算ですし、9月発売予定のiPhone15によって大幅に伸びる予想もあります。
個人的に、今回の下落はアップル株を買い増す久々のチャンスかなと思っています ^^)
S&P500の株価チャートをもう一度見てみてください。今回は「4つのテクニカル指標」で紹介したボリンジャーバンド、RSI、MACDを載せています。それぞれの意味は以前のメルマガをご覧ください。
↓
4つのテクニカル指標:前半
4つのテクニカル指標:後半
現在のS&P500は
・ボリンジャーバンドの下辺水準に下落
・RSIも今年3月以来の安値水準
・MACDも下に大きく広がっている
という状況です。
これらのテクニカル指標だけを参考にするなら、長期なら十分買っていっていい水準、短期ではMACDの向きが変わるのをもう少し待つ水準です。
もちろん実際に投資判断には、今回紹介したインフレ指標や中国恒大の影響、AI銘柄の動向に注目する必要がありますが、個人的にはここ1、2ヶ月急上昇で投資できていなかった資金を少しずつ株に変えていこうと考えています ^^)
ということで今日の本題は、AI銘柄の動向を占う上で重要なヒントになるであろう情報、
「今、シリコンバレーが最も注目しているトピック」
です。
GAFAMをはじめ世界的ハイテク企業の本社が集中するシリコンバレー。そこでは最近、こんな会話がされているそうです。
「〇〇がH100を1000個手に入れたらしいぞ」
「これだけ不足しているのに1000個も!?ということは〇〇はこれからすごく伸びるんじゃないか?」
今シリコンバレーでは、「H100」を誰がいつ、どれだけ入手したのかが話題になっているんです。
その「H100」というのがこちら。
エヌビディア製の、AI向け超高性能の半導体(GPU)です。このGPUは1個4万ドル(600万円近く!!)と値段も超高額ながら、世界中のハイテク企業が取り合っていて深刻な「GPU不足」に陥っているそうです。
実際、「H100」の前機種である「A100」はChatGPTを開発したOpenAIが2.5万個、AI言語モデルLlama2を開発したMetaが2.1万個、テスラが自動運転システムのために7000個も導入したと言われています。
とはいえ、先ほども言った通り「A100」は前機種で、よりパワーアップした「H100」がすでに販売されています。当然、最先端を競い合っているハイテク企業が古い機種で戦うわけにはいかず、競って最新版の「H100」を買い集めようとしているんです。
実際、ChatGPTの次のバージョンであるGPT-5の開発には最新版の「H100」が2.5~5万個も必要だと、イーロン・マスクやモルガン・スタンレーが予測しています。
この「H100」をどれだけ欲しがっているかというと、
・OpenAIは5万個
・Inflectionは2.2万個
・Metaは2.5~10万個
・Microsoft、Amazon、オラクルがそれぞれ3万個
という予測もあります。
もしこの予測が現実になれば、エヌビディアは「H100」という1つの半導体製品だけで100億ドルもの売り上げを出すことになります。これはエヌビディアの昨年1年間の売り上げの40%近くになります。
1つの新製品で売り上げの40%をカバーできるほどの規模…
エヌビディアの株価が年初来で200%近くも上昇しているのも納得ですね ^^)
しかもエヌビディアはすでに「H100」の次の世代、「GH200」というAI半導体を年内に発売することを発表。
価格は発表されていませんが、かなり性能が上がるようなので、価格もそれなりに上がるでしょう。するとまた多くのハイテク企業が最先端AIを開発するために、「GH200」を買い占めようとするかもしれません。
エヌビディアはGoogle、Meta、Microsoft が「GH200」を最初に活用する予定の企業と発表しているので、おそらくすでに納品予定があるのでしょう。
GoogleやMetaはAI向け半導体を独自開発もしているので、エヌビディアにとってはある意味競合です。そうした企業に優先してAI半導体を提供することで、「独自開発するよりエヌビディアを頼った方がいいな」と思わせようとしているのかもしれません。
となると、最新のAI半導体を優先的に回してもらえないAIスタートアップ企業たちに皺寄せがきます…性能が劣る前機種、少ない数や不利な価格で手に入れた半導体では、GoogleやMicrosoftに太刀打ちできませんよね ^^;
こうした関係性だけを見れば、AI半導体を握るエヌビディアと、エヌビディアから優先的に半導体を供給してもらえる可能性が高いMicrosoftなどを超大手ハイテク企業。ここがさらに伸びてAI業界全体を牽引し続ける、という状況が続きそうに思います。
とはいえ、エヌビディアと競合する半導体メーカーのAMDは、今年6月に「MI300X」というAI半導体をリリース。「H100」に比肩する性能を持っていると期待されています。
また、インテルもAI半導体には取り組んでいて、今年1月から「Intel Maxシリーズ」を発売。エヌビディアの「H100」を30%上回るパフォーマンスがあり、AMDより消費電力に優れ、大学や国立研究所など、主に研究機関向けに利用が広がっています(不思議なくらい、株式市場で話題になりませんが ^^;)。
こうした競合の存在もあるので将来どうなるかはわかりませんが、今の株式市場の中心にエヌビディアが存在することは確か。
問題は、エヌビディアに今から投資してもいいのか?すでに持っている人は買い増しすべきなのか?です。
残念ながら、その答えはまだ出せません。
というのも、エヌビディアの決算が23日に控えているからです。前回、5月24日決算でエヌビディアは衝撃的な売り上げと利益、そして業績予想を発表。1日で株価は24%も上昇し、1日に生み出した時価総額は米国市場最大を記録しました。
そんなエヌビディアの次の決算が、間も無く発表されるのです。
それに合わせ、エヌビディア株は上昇し、アナリスト予想もどんどん引き上げられているようです。
実際、Weiss Ratingsの格付けシステムは、決算予想などしません。発表された決算から純粋な”事実”を読み取り、そこから「今投資すべきか?」を評価しています。
なので僕も格付けシステムのように、”事実”が出てから、”事実”に基づいて分析し、投資判断を行いたいと思います ^^)
なので、エヌビディアに今から投資してもいいのか?すでに持っている人は買い増しすべきなのか?に対する僕の考えは、
①8月23日に発表される決算をしっかりと分析する
(色々な投資アナリストが分析記事を出してくれるはずです)
そして、その前に
②マーティン・ワイス氏による特別講演「AI革命2.0」を見て、AIブームの実態や将来性をしっかり理解しておく
投資判断はその後に決めればいいかなと思います。
「AI革命2.0」はWeiss Ratings創業者のマーティン・ワイス氏が東京品川を訪れ、日本人向けに「AIへの投資」をテーマに行った特別講演で、動画を無料公開しています。
ワイス氏はエヌビディア上昇の理由など、すでに起こったAIブームの実態に触れた上で、AIブームの将来性、AIブームの次に来るものにも触れているので、「エヌビディアに投資すべきか?」のヒントが得られるはずです。
↓
P.S.
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※ 広く一般の投資家に情報としてお届けする事を目的とした記事であり、Weiss Ratings Japanが運営する投資サービスの推奨銘柄ではありません。予めご了承下さい。
プロフィール:安居優弥
投資経験は2018年に開始した「つみたてNISA」でS&P500の積み立てを始めたところから。投資については「やっておいた方がいいんだろうなー」程度でしたが、2020年9月にインベストメントカレッジへ転職してからWeiss Ratingsを知り、個別株の分析や、インデックス投資では実現できないポートフォリオ戦略にも興味を持つように。
本格的に投資をするにあたり、最初のハードルは妻でした(笑)。「投資はギャンブル」と考えるタイプでしたから…でも一緒に動画講座を見たり、配当金が入るたび一緒に喜んだりしているうちに、今では僕以上の長期投資家マインドを身につけてくれました。僕がチャートを見て「もう少し落ちそうだから少し待とう…」というと「長期投資にチャートは関係ないから早く買えや」と最高のアドバイスを与えてくれていますw
好きな投資の格言は「投資で一番大切な20の教え」を書いたハワード・マークス氏の
”すぐれた投資家はリターンを生み出す能力と少なくとも同じくらい
リスクをコントロールする能力を持っているという点で卓越している”
この言葉にあるように、投資はリスクとリターンのバランスがなにより大切。しかし、多くの投資情報はリターンに偏りすぎていると感じています。だからこそ、リスクとリターンの両方から、公正なデータに基づいた格付けを行うWeiss Ratingsの情報を一人でも多くの日本人に届け、ハワード・マークス氏が言う「すぐれた投資家」になるお手伝いをしたいと考えています。
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